親の年金に頼る暮らし
「家にお金を入れなくても、親は生活できていました。年金だけで生活ができていたんです」
そう振り返るのは、田中雄介さん(42歳・仮名)です。高校卒業後に上京。様々なことに挑戦する日々を過ごしたのち、地元に戻ってきたのは30代後半。そこで地元の中小企業に就職し、今は営業事務として働いています。現在の月収は32万円ほど、手取りは月約25万円です。
厚生労働省『令和7年賃金構造基本統計調査』によると、40代前半・男性正社員の平均月収は40.6万円、高校卒に限ると34.2万円。同年代を下回る給与水準に、「好き勝手やってきたのだから仕方がない」と雄介さん。実家で父(74歳)、母(72歳)と暮らしていました。
父の年金は月約18万円、母は月約7万円。年金だけで毎月25万円近い収入があり、一家の支出のすべてをまかなっていました。雄介さんは家にお金を入れることはなく、スマートフォン代8,000円や、車の維持費約2万円のほか、趣味や外食などは自分もち。それでも毎月10万円以上が手元に残りました。貯蓄は約420万円。
「結婚の予定もないし、この生活ならこの先も何とかなる」
そう考えていました。東京での楽しい日々を捨てて、安定を選んだ雄介さん。平凡ながらも穏やかな時間がこのまま続いていくと信じて疑いませんでした。
しかし転機は訪れます。父が脳梗塞で倒れたのです。命に別条はありませんでしたが、右半身にまひが残ります。退院後は要介護3と認定されました。母も高血圧や変形性膝関節症を抱え、一人で介護を続けることは難しい状態でした。
最初は介護サービスを利用しながら、雄介さんも仕事を続けていました。しかし、父は夜中に転倒を繰り返します。デイサービスを嫌がり、訪問介護の日も「知らない人を家に入れるな」と怒鳴ることが増えました。
会社では遅刻や早退が続きました。有給休暇は半年ほどで使い切り、上司からは在宅勤務や時短勤務も提案されました。それでも、急な呼び出しは避けられません。
「仕事と介護、どっちを優先するんだ」
取引先との打ち合わせを何度も変更し、同僚にも迷惑をかけました。