(※写真はイメージです/PIXTA)
初めての年金支給日…「消えた3万8,000円」の正体
ついに70歳を迎えた浩三さんに、初めての年金支給日がやってきました。
年金は原則として、偶数月の15日に、前月と前々月の2か月分がまとめて振り込まれます。浩三さんは、「2か月分で43万円以上が振り込まれているはずだ」と期待に胸を膨らませながら銀行に向かいました。
「今日はお祝いだから、国産のクラフトビールを買って帰ろう。ホタテの貝柱とチーズのつまみも買おう。あれ、ウマいんだよなあ…」。そんなことを考えながら、通帳をATMの機械に滑り込ませます。
しかし、通帳に印字された金額を見て、浩三さんは頭が真っ白になりました。通帳に刻まれていた金額は、43万円どころか、40万円すら下回る「39万4,000円」。自身の想定より3万8,000円も少ない金額しか口座に入っていなかったのです。
「どういうことなんだ…?」。頭が真っ白になった浩三さんは、ご褒美のビールとおつまみを買うのも忘れて帰宅しました。そして、自宅に届いていた住民税や国民健康保険料の納付書を見て、ようやく現実を理解することになります。
浩三さんが見積もっていた「税金や保険料の控除額10%」の枠をはるかに超えた、総額8万6,000円(1か月あたり4万3,000円)もの大金が、住民税・国民健康保険料・介護保険料として引かれていたのです(※新しく年金を受給し始めた当初はデータ連携が間に合わず、年金口座から直接天引きされないケースが多くあります。そのため、自治体から届いた納付書で支払う実質的な負担分を含みます)。
- 本来もらえるはずだった2か月分の金額(額面):48万円(月額24万円)
- 2か月分の税金・保険料の実際の負担額:8万6,000円(月額4万3,000円)
- 実際の手取り支給額:39万4,000円(月額19万7,000円)
一般的に、年金受給者の税金・社会保険料の実質負担率は10%〜15%程度に収まることが多いと言われています。しかし、浩三さんの場合は、想定をはるかに超える「約18%」という高負担ゾーンに突入していました。
なぜこれほどの負担が課されてしまったのでしょうか。その最大の理由は、住民税や国民健康保険料が「前年の所得」をベースに計算されるという時間差の罠にありました。
浩三さんは69歳まで児童養護施設でしっかり働いており、現役並みの就労収入がありました。そのため、70歳になって年金生活に突入した最初の年は、「前年の高い所得」を基準にした税金や保険料の請求がスライドしてきたのです。
そこに、退職によって社会保険料の「会社半分負担(労使折半)」がなくなったこと、年金の繰り下げによって受給額面そのものが増えたことが重なり、18%という驚異の実質負担率となってしまったのでした。