(※写真はイメージです/PIXTA)
子の老後を揺るがす「親への仕送り」
転機になったのは、実家のエアコン故障でした。修理では対応できず、買い替え費用は18万円。母親は当然のように電話をかけてきました。
「今年は暑いし、どうしても必要なの」
佐伯さんは断れませんでした。ボーナスから全額を負担しました。そのことを弟へ伝えると、返ってきたのは短い返事でした。
「兄さんのほうが収入あるだろ」
弟は地方で家庭を持っています。決して裕福ではありません。だからといって、負担はほぼ佐伯さん一人に集中していました。数日後、母親から電話がありました。
「XX(佐伯さんの弟)には生活があるからね。あんたなら何とかなるでしょう」
その一言に、思わず声を荒らげました。
「俺にも生活があるんだよ」
母親を見捨てるわけではありません。しかし支え続ければ、自分たちの老後資金はさらに減っていきます。毎月5万円は年間60万円。10年間続けば600万円になります。その金額は、老後の生活に大きく影響する水準です。
「このままでは自分たちの老後がやばい。そんな危機感でいっぱいで……」
総務省『家計調査 家計収支編 2025年』によると、65歳以上の無職夫婦世帯における1カ月の可処分所得は22万1,544円。対して消費支出は26万3,979円となり、毎月4万2,434円の赤字が生じています。佐伯さん夫婦がいざ年金生活を迎えた際、この不足分を補うための蓄えがなければ生活は成り立ちません。親への援助が、結果的に「自分たちの老後破綻」という負の連鎖を招きかねない厳しい現実が横たわっています。
「家族の間だけで解決するのは限界と考えました」
佐伯さんは現在、実家のある自治体の地域包括支援センターや福祉窓口に相談し、高齢者向けの公的支援や減免制度が使えないか、母親を交えて模索し始めているといいます。