FIRE民が「現金で買う」という選択を避けたい切実な理由

とはいえ資産は1億2,000万円超。「キャッシュで買えばいいではないか」と思うかもしれません。しかしここに、FIRE達成者ならではの“それは絶対に避けたい”というジレンマがありました。

FIRE生活において、運用資産は取り崩すための貯金ではなく、「お金を生み続ける装置」です。たとえば、1億2,000円を年5%で運用できれば、毎年600万円(税引前)を生み出し、生活費やローン返済の原資になります。

もし7,500万円をキャッシュで買ってしまえば、運用資産は4,500万円に激減。これを年5%で運用できたとしても、運用益は年225万円。生活は一気に厳しくなります。そのため、キャッシュで家を買うという選択肢はFIRE生活において、現実的ではないのです。

問題はそれだけではありません。小平さんは52歳。年金が始まる65歳まで13年、その間、公的年金は受け取れません。60歳からの繰上げ受給も選択できますが、生涯減額が続くというデメリットがあります。

無職の高齢夫婦の平均的な支出は月およそ30万円(注4)。小平さん夫婦が希望する生活費は月35万円。それなりに高収入だった小平さんの年金は、夫婦の標準的な年金額(月約24万円・注5)より多い見込みですが、それでも月35万円には到底届きません。

ローンの扉が閉ざされ、現金でも買えない。これが、勢いで退職したFIRE後の住み替えに潜む思わぬ落とし穴だったのです。