「ついに1億円を超えました!」――61歳の隆夫さんは、30年以上かけて投資を続けてきました。その積み重ねが、ようやく数字になった瞬間です。しかし喜びに浸る彼を待っていたのは、妻が残していった“まさかの書類”と置き手紙でした。金融資産1億円以上を持つ世帯は全体のわずか3.1%です。世間的には「勝ち組」のはずの彼に、いったい何が起きたのでしょうか。FPの青山創星氏と一緒に見ていきましょう。
「ついに資産1億円突破したぞ!」61歳会社員、歓喜の咆哮…翌週、テーブルにぽつんと残された「置き手紙」。30年越しの夢が砕け散った日【FPが解説】
1億円達成の翌週、テーブルに置かれていたもの
「資産1億円突破したぞ!」
2025年秋のある夜、小倉隆夫さん(仮名、61歳、家電メーカー事務職)はリビングで声を上げました。毎週末、銀行口座と証券口座の残高を足し合わせてメモしてきた“資産ノート”。その数字が、ついに8桁から9桁に変わった瞬間です。30代から続けてきた投資が、ようやく実を結びました。
J-FLECの「家計の金融行動に関する世論調査」(※1)によれば、二人以上世帯の金融資産保有額は平均値1,940万円、中央値はわずか720万円です。1億円以上を保有する世帯は、3.1%にすぎません。隆夫さんは間違いなく、成功者のひとりでした。
しかし翌週、仕事から帰宅した隆夫さんがテーブルで目にしたのは、祝いのケーキではありませんでした。1枚の離婚届です。そして妻・佳子さん(仮名・58歳)の姿は、どこにもありませんでした。33年間連れ添った妻が、なぜ今。呆然とする隆夫さんは、まだ何が起きたのか理解できずにいました。
「それ、コスパ悪くない?」が口癖の男
隆夫さんは大手メーカー勤務の会社員です。決して特別な高収入があったわけではありません。しかし30代からコツコツと投資を続け、株式・投資信託で約7,000万円、預貯金で約3,000万円。計1億円を貯めました。
彼の信条は明快でした。
「1円でも多く、1円でも効率よく」
家計管理表には、すべての支出が「ムダ」か「必要」かで色分けされていました。赤で塗られた「ムダ」は容赦なく削減対象です。この合理性こそが、彼を成功に導いた武器でした。
「それ、コスパ悪くない?」
「リターンは?」
いつの間にかこれが口癖になりました。リターンのない支出は削り、利益を最大化する。投資の世界では、これが成功の秘訣です。問題は、隆夫さんがこの論理をそのまま家庭にも持ち込んでしまったことでした。
投資家として正しい彼は、夫として、祖父として、同じ正しさを家庭でも貫いてしまいました。いや、貫いているという自覚すらなかったのかもしれません。
