(※写真はイメージです/PIXTA)
夫と妻、それぞれの家族観
ともに66歳のカンタさんとケイコさんの結婚生活は、30年以上にわたり順調そのものでした。現役時代は共働きで互いに忙しいなかで、喧嘩をすることはあっても、家事や育児を分担し、協力し合ってきた夫婦です。二人の娘を育て上げ、すでに娘たちはそれぞれに自立しています。
経済的には、これからも夫婦で暮らしていく分には困らない程度の蓄えがありました。持ち家(マンション)で、老後資金は2,100万円。二人が受け取る年金は合わせて月額23万円にのぼり、贅沢をしなければ東京でも生活を維持していける水準でした。
一方で、二人が生まれ育った「家族の距離感」には違いが存在していました。
妻のケイコさんはひとりっ子として育ち、高校生のころに父親を病気で亡くしています。それ以来、母親と二人きりで支え合ってきたこともあり、強い絆で結ばれた親子仲でした。一方、夫のカンタさんは、両親や兄弟と決して仲が悪いわけではないものの、お互いのプライベートには干渉しない、どこかドライで距離感のある家族関係のなかで育った背景があります。
ケイコさんは結婚当初、カンタさんとその家族のことを「ドライだな」と思っていました。しかし、結婚生活を重ねるうえで「私と一緒にいるなかで少しずつ変わったのかな?」と感じる場面も増えていました。娘たちへの接し方も温かく、結婚生活を重ねるなかで、少しずつ愛情深い人に変わっていってくれたんだ、とケイコさんは思うようになったといいます。
実母の介護問題で露呈した、夫の根本的な冷淡さ
平穏な日々に変化が訪れたのは、地方で一人暮らしを続けていたケイコさんの実母が体調を崩し、介護が必要になったときのこと。
ひとりっ子であるケイコさんにとって、母を支えられるのは自分しかいません。とはいえ、カンタさんとの生活も大切にしたいと考えたケイコさんは、カンタさんに提案を持ちかけました。
「お母さんの介護のために、しばらく私が実家に戻る時間を増やしたいの。東京と実家を行き来する、二拠点生活のような形にするのはどうかな」
夫であれば「大変だけど、お前の母親だしな」「できる限りの協力をしよう」といってくれるものと、ケイコさんは思い込んでいました。しかし、相談を持ちかけられたカンタさんから返ってきたのは、あっさりとした一言。
「東京から行ったり来たりなんて無理だろ。家で看ないで、向こうの施設にでも入れればいいじゃん」