令和6年(2024年)の人口動態統計によると、年間の離婚件数18万5,895組のうち、同居期間「20年以上」のいわゆる熟年離婚は4万686組と、離婚全体の2割以上(約21.9%)を占めています。さらに同居「30〜35年(5691組)」「35年以上(7,194組)」といった、高齢期を迎えた世代での離婚も前年より増加傾向にあり、夫婦の絆が最終盤で突如として断ち切られるケースがデータからも浮き彫りになっています。いったいどんな理由で熟年離婚に至るのでしょうか。事例をみていきます。※事例の人物名はすべて仮名です。
母と夫、「母」を選びました…“老後資金2,100万円・年金月23万円”で仲睦まじく暮らしていた66歳夫婦、妻が夫を残して実家へ。〈二度と帰らなかった〉理由 (※写真はイメージです/PIXTA)

夫と妻、それぞれの家族観

ともに66歳のカンタさんとケイコさんの結婚生活は、30年以上にわたり順調そのものでした。現役時代は共働きで互いに忙しいなかで、喧嘩をすることはあっても、家事や育児を分担し、協力し合ってきた夫婦です。二人の娘を育て上げ、すでに娘たちはそれぞれに自立しています。

 

経済的には、これからも夫婦で暮らしていく分には困らない程度の蓄えがありました。持ち家(マンション)で、老後資金は2,100万円。二人が受け取る年金は合わせて月額23万円にのぼり、贅沢をしなければ東京でも生活を維持していける水準でした。

 

一方で、二人が生まれ育った「家族の距離感」には違いが存在していました。

 

妻のケイコさんはひとりっ子として育ち、高校生のころに父親を病気で亡くしています。それ以来、母親と二人きりで支え合ってきたこともあり、強い絆で結ばれた親子仲でした。一方、夫のカンタさんは、両親や兄弟と決して仲が悪いわけではないものの、お互いのプライベートには干渉しない、どこかドライで距離感のある家族関係のなかで育った背景があります。

 

ケイコさんは結婚当初、カンタさんとその家族のことを「ドライだな」と思っていました。しかし、結婚生活を重ねるうえで「私と一緒にいるなかで少しずつ変わったのかな?」と感じる場面も増えていました。娘たちへの接し方も温かく、結婚生活を重ねるなかで、少しずつ愛情深い人に変わっていってくれたんだ、とケイコさんは思うようになったといいます。

実母の介護問題で露呈した、夫の根本的な冷淡さ

平穏な日々に変化が訪れたのは、地方で一人暮らしを続けていたケイコさんの実母が体調を崩し、介護が必要になったときのこと。

 

ひとりっ子であるケイコさんにとって、母を支えられるのは自分しかいません。とはいえ、カンタさんとの生活も大切にしたいと考えたケイコさんは、カンタさんに提案を持ちかけました。

 

「お母さんの介護のために、しばらく私が実家に戻る時間を増やしたいの。東京と実家を行き来する、二拠点生活のような形にするのはどうかな」

 

夫であれば「大変だけど、お前の母親だしな」「できる限りの協力をしよう」といってくれるものと、ケイコさんは思い込んでいました。しかし、相談を持ちかけられたカンタさんから返ってきたのは、あっさりとした一言。

 

「東京から行ったり来たりなんて無理だろ。家で看ないで、向こうの施設にでも入れればいいじゃん」