「あと数年働けば、老後の不安はなくなるはずだった」――十分な収入を得ていた共働き夫婦のそんな確信が、ある日突然崩れ去りました。倒れたのは、再雇用先まで決まっていた59歳の夫。命は取りとめたものの、残ったのは思いがけない後遺症と、計算外の家計の現実でした。「万が一」は、死亡だけではない。FPの三原由紀氏の解説とともに、その意味を今一度確かめてみてください。
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「あなた、元に戻って」夫の異変、妻の悲痛な叫び…郊外から駅近6,400万円のマンションに住み替えた50代“勝ち組”夫婦。完璧な返済プランを崩壊させた「共働き計画の死角」 【FPが解説】
「介護認定がなくても働けなくなる」見落とされがちなリスク
高齢期のリスクというと、多くの人は認知症や要介護状態を思い浮かべます。しかし実際には、介護保険サービスを本格的に利用する状態ではなくても、本人や家族の働き方が大きく変わるケースがあります。
厚生労働省「国民生活基礎調査(2022年)」によると、要介護・要支援となった主な原因として、脳血管疾患(脳卒中)は全体の約16.1%を占め、認知症に次ぐ第2位となっています。脳梗塞や脳出血は、高齢者だけの病気ではありません。50代後半から60代前半は、仕事の責任が最も重い時期である一方、健康リスクも高まる年代です。
さらに共働き世帯では、「夫婦とも65歳まで働く」ことを前提に老後資金計画を立てているケースが少なくありません。だからこそ、一方が働けなくなった場合の影響は想像以上に大きくなります。
今回の田中さん夫婦も、そうでした。武さんは介護を必要とする状態ではありませんが、それまで通り働くことはできません。
また、貯蓄不足だったわけでもありません。むしろ計画通りに老後準備を進めていました。しかし、「これから得られるはずだった収入」が消えたことで、老後設計そのものの見直しを迫られることになったのです。
