「あと数年働けば、老後の不安はなくなるはずだった」――十分な収入を得ていた共働き夫婦のそんな確信が、ある日突然崩れ去りました。倒れたのは、再雇用先まで決まっていた59歳の夫。命は取りとめたものの、残ったのは思いがけない後遺症と、計算外の家計の現実でした。「万が一」は、死亡だけではない。FPの三原由紀氏の解説とともに、その意味を今一度確かめてみてください。
(※写真はイメージです/PIXTA)
「あなた、元に戻って」夫の異変、妻の悲痛な叫び…郊外から駅近6,400万円のマンションに住み替えた50代“勝ち組”夫婦。完璧な返済プランを崩壊させた「共働き計画の死角」 【FPが解説】
夫を襲った「まさかの事態」…老後計画の崩壊
ある休日、社内のゴルフ同好会のコンペに参加していた武さんは、プレー中に脳梗塞で倒れました。
幸い命は助かりました。歩行もできるようになり、会話にも大きな支障はありません。しかし退院後、以前は同時に複数の案件を管理していた武さんが、打ち合わせ内容を忘れる、資料の理解に時間がかかるようになりました。資料を読んでも理解に時間がかかり、段取りが組めない、といった変化が現れるようになったのです。を組むことも難しくなったのです。
診断されたのは、高次脳機能障害でした。
「半年もすれば職場に戻れると思っていました」
歩美さんはそう振り返ります。しかし現実は違いました。営業本部長としての職務復帰は難しく、関連会社への転籍話も白紙になりました。通院への付き添いや各種手続きが増えるなか、歩美さん自身も残業を減らさざるを得なくなります。
武さんが66歳まで働くことで増えるはずだった厚生年金部分は、上乗せされなくなりました。さらに、66歳までの6年間で得られるはずだった年収650万円分の収入(約3,900万円)と退職慰労金約1,000万円、合わせて約4,900万円の収入見込が、一瞬にして消えたのです。
もちろん何より心配なのは、夫のこと。しかし、住宅ローンや生活費という現実から目を背けることもできません。
「お願い、元に戻って」
歩美さんは、リハビリに向かう夫の背中を見ながら何度もそう願ったといいます。
