(※写真はイメージです/PIXTA)
2年後、二人が漏らした「本音」
移住から2年が経ち、月の生活費を改めて計算したセイタさんは言葉を失いました。食費・光熱費・車2台の維持費・医療費・交通費を合計すると、月に22〜23万円程度かかっています。年金は17万円。毎月5〜6万円の赤字です。それを賄うはずの「予備の300万円」はすでに消えていました。
都内からの旧友と久しぶりに電話したセイタさんは、酒を飲みながらこう打ち明けました。
「庭は最高だよ、本当に。でも正直、お金のことが頭から離れない。退職金をほぼ使い切っちゃったから、病気でもしたら、どうするんだろうって」
ナナさんにも変化がありました。「移住前は、地域のみなさんとのんびり野菜を育てる生活を想像していました。でも自治会の活動や近所の草刈り、地域のお付き合いが思いのほか多くて。都会から来た私には、ちょっとしんどいこともあります」。庭仕事の楽しさは本物だが、体力的な負担も年々感じるようになっていると言います。
二人が口をそろえて言うのは「移住自体は後悔していない」という言葉です。しかしその直後に続く「でも……」があります。
移住相談7万件超の時代に見えない「お金の現実」
マイナビニュースが2024年に公表した『【地方移住】「やめた人」の7割が3年以内に離脱、最大の理由は?』によると、移住後に後悔した理由の1位は「交通手段が制限され不便だった」、3位は「医療体制が十分でなかった」でした。これはセイタさん夫婦が感じた「車2台が必要」「病院が遠い」という現実とそのまま重なります。
費用の問題も深刻です。古民家のリフォーム費用は部分的な改修でも300〜500万円が相場とされますが、耐震・断熱・水回りなどを含む大規模改修では1,500万円を超えることも珍しくありません。「購入費は安い」と思っても、住める状態にするためのコストが想定を大幅に上回るのは、よくあるケースです。
生活費についても、地方暮らしが必ずしも「安上がり」とはいえません。総務省「家計調査(2025年平均)」によれば、65歳以上の夫婦のみ無職世帯では月約4.2万円の赤字が生じています。年金が月17万円であれば赤字幅はさらに広がり、退職金や貯蓄の取り崩しペースが加速することになります。
「憧れ」を「計画」に変えるために
セイタさん夫婦の経験は、移住を全否定するものではありません。庭付きの暮らし、地域のつながり、自然の豊かさは、都市では得られない本物の価値です。問題は、「憧れ」だけで動いた結果、お金の現実が後から追いかけてきたことです。
田舎移住を老後の選択肢として考えるなら、最低でも次の4点を事前に確認することが欠かせません。
◎古民家の場合はリフォーム費用を多めに見積もる(相場の1.5〜2倍を想定)
◎車の維持費を必ず月次で計算に入れる
◎移住先での光熱費・医療アクセスを現地で確認する
◎都市に残る家族・友人への交通費を年間コストで算出する。
退職金は老後の「最後の砦」でもあります。移住という夢に全額を投じる前に、残す金額の下限を決めておくことが、長期的な安心につながるでしょう。
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