(※写真はイメージです/PIXTA)
「子どもがいるから大丈夫」という安心の裏で
ここで、年金収入の実態を確認します。日本年金機構の2026年度モデル年金によれば、夫が平均的な収入で40年間会社員として勤務し、妻が専業主婦だったモデル世帯の年金額は月額23万7,279円です。一方、マモルさんの両親のように年金が月20万円に届かないケースも珍しくありません。収入が低かったり、勤続年数が短かったりすれば受給額はさらに下がります。
支出はどうでしょうか。総務省「家計調査(2025年平均結果の概要)」(2026年2月公表)によれば、65歳以上の夫婦のみ無職世帯では、可処分所得の約22.2万円に対して消費支出が約26.4万円となっており、毎月約4.2万円が不足する計算になります。年金だけでは生活費を賄いきれない構造が、データからも明らかです。
こうした家計の赤字を、子どもが穴埋めしているケースは少なくありません。それが重なると、子ども自身の生活設計を大きく圧迫します。公益財団法人生命保険文化センターが2025年度に実施した「生活保障に関する調査」によると、自分の老後生活に「不安感あり」と答えた人は83.2%にのぼり、不安の内容として最多だったのは「公的年金だけでは不十分」(79.8%)でした。つまり現役世代のなかには、自分自身の老後資金を準備しながら親世代への経済的な支援も求められるという、「二重の重圧」を背負っている人がいるのが現実です。
さらに深刻なのは、親子間のお金のやりとりが法的にも感情的にも曖昧になりやすい点です。「家族だから借用書は不要」といった慣習がのちの金銭トラブルを不可視化させています。援助なのか貸し付けなのかの区別もないまま、マモルさんのように350万円という大金が「なかったこと」にされてしまうリスクは、多くの家庭に潜んでいます。
「家族だから」がリスクになる
マモルさんのケースは、「家族だから助け合う」という言葉の裏側に潜む、深刻なお金のトラブルを映し出しています。年金月20万円という数字だけを見れば「それなりにある」と映るかもしれません。しかし実際には、月数万円の赤字が生まれる水準であり、その不足分が長年にわたって子どもへの依存という形でのしかかっていました。
子どもの側は「断ることは冷たいことではない」という認識を持つことが大切です。自分の老後資金を守ることは、将来的に親の介護費用までひとりで抱え込まないための自衛策でもあります。
お金の問題は、家族であっても空気で済ませるには限界があります。家族でお金の話をオープンに話し合える関係性をつくることが、「老後の安心」への確かな第一歩になるはずです。
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