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「298万円の修繕費」で老後生活が破綻…持ち家が重荷に
さらに夫婦を追い詰めたのが、建物の老朽化です。一昨年の梅雨時期、2階の寝室で雨漏りが発生。外壁の塗装も剥がれ落ち、触ると白い粉が手につく状態でした。地元の建築業者に見積もりを依頼したところ、提示された金額は屋根の補修と外壁の全面塗装を合わせて「298万円」。
現在の佐藤さん夫婦の収入は、2人の年金を合わせて月24万円。固定資産税の按分、光熱費、食費、互いの医療費を支払うと手元に現金はほとんど残りません。現役時代に蓄えた貯蓄は1,500万円ほどありますが、これは今後の医療費や介護施設への入所費用などのために、絶対に使わないと決めているもの。そこから一気に300万円近くを拠出することは、老後の計画が大きく変わってしまうリスクがあるのです。
高齢者の住まいをめぐる維持管理の問題は、決して佐藤さん夫婦だけの特別な事例ではありません。国土交通省『令和6年度 住宅市場動向調査』によると、リフォームを行う動機として最も多いのは「住宅が傷んだり汚れたりしていた(32.1%)」という理由です。リフォームを実施した住宅の平均築後年数は29.5年となっており、長年住み続けた家はどうしても老朽化が避けられません。
また、一戸建て住宅におけるリフォーム資金総額の平均は168万円に上ります。佐藤さんのように屋根や外壁などの大規模な修繕が重なれば、300万円近い出費になることも珍しくないのです。限られた年金収入の中でこれほどの金額を急に捻出するのは容易ではなく、かつての夢のマイホームが老後の家計を脅かす大きなリスクとなっているのが現実と言えます。
「庭はただの重荷」…手遅れになる前に考えるべき“住み替え”
一雄さんは、現在の心境を次のように語ります。
「まさか修繕費や草むしりでこれほど苦労するとは思いもしませんでした。このままこの家にしがみつくことが正解なのか分かりません。買い手が見つかるなら、早く手放してしまいたいというのが本音です」
美智子さんも力なく頷きます。
「若いときは、広い庭のある家は憧れでした。でも、今の私たちにとっては、ただの重荷になってしまった。一戸建てを維持し続けることが、こんなに大変だとは……この年になってから実感しています」
人生における、最大の買い物のひとつである「マイホーム」。しかし、現役時代に大金を投じて手に入れたとしても、その価値がずっと続くとは限りません。住宅の老朽化と住人の高齢化が同時に進行するなか、適切な時期に住まいを縮小する「住み替え」や「減築」といった選択肢を現役時代から想定しておくことが、老後の生活を守るためには必要です。