(※写真はイメージです/PIXTA)
豊かな自然を求めて…定年後の決断
都内の大手電機メーカーを60歳で定年退職した佐藤和雄さん(仮名・60歳)と、妻の恵美子さん(仮名・60歳)は、長年の夢であった地方移住を決意しました。現役時代、慌ただしい都会の生活に追われていた夫婦にとって、テレビの旅番組や移住特集で見る「豊かな自然と穏やかな時間の流れる田舎暮らし」は、理想のセカンドライフそのものだったといいます。
1,800万円の退職金とこれまでの蓄えを合わせ、夫婦は関東近郊の山あいに位置する、人口数千人の小さな町に中古の平屋を一軒家として購入しました。
「現役時代は本当に忙しく、退職したら静かな場所でゆっくりと家庭菜園でもしながら暮らしたいと、夫婦でずっと話し合っていたのです。東京からもそれほど遠くない場所を選んだつもりでした」と和雄さんは当時を振り返ります。
移住当初の数週間は、鳥のさえずりで目覚め、窓から見える緑豊かな景色に感動する日々でした。夜になると東京とは比べものにならないくらいの星空が広がり、まさに感動の連続。しかし、生活のセットアップが落ち着き、日常の暮らしが始まると、東京では想像もしなかった現実が夫婦にのしかかることになります。
誤算だった「車社会」の現実
佐藤さん夫婦が直面した最大の誤算は、地方ならではの交通事情でした。物件がある周辺は確かに静かでのどかでしたが、生活に必要な商業施設や医療機関は、そこから数キロメートル離れた幹線道路(国道)沿いに完全に集中していたのです。
スーパーでの買い物や病院への通院のために車を出すと、そこには予期せぬ光景が待っていました。和雄さんは当時の困惑をこう語ります。
「地方は車社会だと聞いていましたが、ここまで渋滞がひどいとは思ってもみませんでした。地方にまで来て、まさか東京の通勤ラッシュのような激しい渋滞に毎日巻き込まれるとは夢にも思いませんでした」
この地域は公共交通機関がほとんどないため、住民の移動手段はほぼ100%自家用車に依存しています。そのため、生活拠点が集まる主要道路に地域全体の車が一極集中し、慢性的な大渋滞を引き起こしていたのです。ちょっとした買い物に行くだけで、往復に1時間も2時間も費やすこともよくあるのだとか。