月32万円の高級老人ホームへ入居後、母が要介護に。おむつ代や通院費など月4.5万円の新たな負担が発生したにもかかわらず、なぜか総支払額が減るという奇妙な現象が起きました。知っておくべき「老人ホームの費用のカラクリ」についてみていきます。
「月32万円」の高級老人ホームに入居した78歳母が要介護に。〈おむつ代〉と〈通院費〉で「月4.5万円」の負担増も、総支払額は減る「老人ホームの費用」の不思議 (※写真はイメージです/PIXTA)

「おむつ代」と「通院費」が追加されたのに、なぜか減った請求額

和子さんが正式に「要介護3」の認定を受け、本格的な車椅子生活が始まると、達也さんが予想していた通り、それまでかかっていなかった新たな実費が次々と発生しました。

 

「最も負担を感じたのが『おむつ代』です。施設指定のものを購入する必要があり、処理費用も含めて本人一人分で月に約2万5,000円がかかりました」

 

さらに達也さんを悩ませたのが、和子さんの「通院付き添い費」でした。和子さんは持病の専門医を受診するため、月に2回、外部の病院へ通院する必要がありました。施設側の基本サービスには含まれておらず、外部の専門医への通院付き添いは個別の有料オプション扱いとなっていたのです。

 

「施設のスタッフの方に付き添いをお願いすると、1時間あたり約3,000円の費用が発生しました。往復と待ち時間、診察を合わせると1回につき3~4時間はかかります」

 

これが月に2回で、合計約2万円の負担になりました。おむつ代と通院付き添い費を合わせると、月々約4万5,000円の追加費用が発生したことになります。

 

ところが、その翌月に施設から届いた請求書を見て、達也さんは驚くことになります。提示された金額は、それまで支払っていた32万円を下回る「約30万円」だったのです。

 

多くの介護付き有料老人ホームでは、和子さんのように自立(要介護認定なし)の状態で入居する場合、その状態では施設の介護保険サービスを利用することができません。施設側は、入浴や掃除、洗濯、日々の見守りといった生活サポートを行う対価として、施設独自の生活支援費(生活サポート費)を全額自己負担の形で月額料金に設定しています。

 

しかし、入居者が要介護の認定を受けると、それまで施設に全額自己負担で支払っていた生活支援費(和子さんの場合は月約9万円)に代わって、国が定めた定額の「介護サービス費(特定施設入居者生活介護費)」の支払いに移行します。

 

要介護3の認定を受け、仮に自己負担割合が1割であった場合、国の定める定額の介護保険自己負担分は月約2万5,000円程度に。つまり、基本料金の部分だけで9万円の支出が2万5,000円に減るという、マイナス6万5,000円のスライドが起きていたのです。

 

ここに、新しく発生したおむつ代や通院付き添い費(プラス4万5,000円)を合算しても、トータルの引き算では結果として介護が始まる前よりも総支払額が安くなるという逆転現象が成立することになります。

 

「介護が始まればお金がいくらあっても足りなくなると考えていましたが、逆に負担が軽くなるなんてこと、あるんですね」

 

老人ホームのパンフレットなどに書かれた表面的な数字だけ追っていると、想定外の差異が生じるもの。高橋さんの場合は負担減となりましたが、負担増になることもしばしば。正しいシミュレーションのもと、しっかりと資金計画を立てることが大切です。