(※写真はイメージです/PIXTA)
「個別相談会」でFPから耳にした“衝撃の事実”
しかし、竹田さんは先日、衝撃的な事実を耳にします。
それは、近所の公民館で開かれた『老後のくらしとお金』というセミナーに出席したときのこと。講演終了後に開かれた個別相談で、講師のFPに「妻の年金繰下げはいつまで続けるべきか」と質問してみました。するとFPは、次のように回答しました。
「公的年金を65歳より前に『繰上げ受給』の場合は、老齢基礎年金と老齢厚生年金を必ずセットで請求しなくてはいけません。ですが、65歳よりあとに受け取る『繰下げ受給』の場合は、2つをわけて請求できます。
奥様の長生きリスクに備えて繰下げ受給を選んだとのことですが、繰り下げるのは『老齢基礎年金』だけにして、老齢厚生年金は65歳からすぐに受け取りを開始すべきだったかもしれませんよ。
なぜなら、竹田さんに万が一のことがあった場合に、奥様が受け取れる遺族厚生年金は竹田さんの老齢厚生年金の3/4の額になりますが、その金額は奥様自身が繰下げで増やした分を含めての老齢厚生年金額が差し引かれた支給額となります。
つまり、奥さんが厚生年金を5年繰り下げて42%増やしたとしても、竹田さんが亡くなると、増えた分は遺族厚生年金が減額されてしまうため、合計受給額は繰り下げていなかった場合と同じとなります。そうなると、 繰下げ待機期間中にもらえるはずだった年金を損するだけになる可能性が極めて大きいです」
そこでFPは電卓を叩き、こういいました。
「竹田さんの個別具体的な損益分岐点となる年齢は年金事務所で確認をしてもらいたいですが、一般論で申し上げると5年繰下げ後にチャラとなるのに、繰下げ期間の5年間を含めて約17年かかります。そして夫が亡くなった段階で繰下げなかった場合と同じ支給合計額となり、繰下げの苦労はすべて水の泡になってしまいます。
なお、老齢厚生年金の繰下げ待機中であれば、65歳時点に遡って『増額なしの本来の金額』で過去5年分までを一括で受け取ることができます。ですから、老齢基礎年金だけは繰下げ待機のまま、老齢厚生年金は受け取っておくべきではないでしょうか?」
竹田さんは遺族厚生年金の細かい仕組みをこのとき初めて知りました。これでは妻の長生きリスクに備えたことにならないでしょう。自分が亡くなったあと、妻を泣かせるはめになるところでした。はじめはショックを受けたものの、FPの説明には納得しかありません。竹田さんは笑顔で頭を搔きながら、「この“臨時収入”を使って妻と温泉旅行にでも行ってきます」と、現実的で役に立つアドバイスをくれたFPに何度も何度もお礼をいいました。
その後、竹田さんは妻を連れて年金事務所へ駆け込み、まずは過去2年分の妻の老齢厚生年金を、一括で受け取る手続きを行いました。
山田 信彦
ニックFP事務所
代表
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