(※写真はイメージです/PIXTA)
息子の犯した罪
なぜ、完璧だったお嫁さんが、ここまで義実家を拒絶するようになったのでしょうか。
トシユキさんもヨシコさんも、その理由は痛いほどわかっていました。ただ、自分たちの心の中で折り合いがつかなかったのです。
それは、息子の「浮気」でした。リコさんが共働きで仕事をこなしながら、ワンオペに近い状態で4歳の孫を育てていた裏で、息子は別の女性と関係を続けていました。それが数ヵ月前、リコさんの知るところとなり、夫婦関係は破綻。
息子からその事実を打ち明けられたとき、ヨシコさんは息子を怒鳴りつけました。悪いのは100%息子。それはわかっているのです。しかし、老夫婦にはどうしても割り切れない感情がくすぶっていました。
親の謝罪すら届かない嫁の拒絶
「息子があんな不始末を起こしたのは本当に情けないです。心よりお詫び申し上げます」
事実を知ってすぐ、ヨシコさんはリコさんへ謝罪の電話を掛けましたが、応答がないので、LINEを何度も送りました。しかし、リコさんから返信が来ることはありません。次第に、老夫婦のなかには「寂しさ」と同時に、ある種の「怒り」に似た感情が湧き上がってきます。
「悪いのは息子であって、私たちじゃない。私たちはリコさんの味方になって息子を叱ったし、これまでだって、さんざん援助してあげてきたのに……」
リコさんからすれば、裏切った夫の親からの連絡など、いまは視界に入れたくもない苦痛の対象でしかないのでしょう。夫の実家から受け取ってきた数々の援助すら、いまの彼女にとっては「夫の不倫」という最悪の裏切りによって、すべて色褪せ、汚されたものに感じられているのかもしれません。
どれほど親が息子を叱り、平身低頭で謝罪したところで、リコさんの凍りついた心を溶かすことはできませんでした。
息子の罪を背負わされた、老夫婦の寂しい余生
現在、息子夫婦は離婚に向けて、弁護士を介して話し合いを進めているそうです。
実家への帰省や誕生会のたびに、笑顔で綺麗な花を持ってきてくれたリコさん。そして、遊びにくるたび、胸に飛び込んできた4歳の孫。あの温かかった光景は、息子の身勝手な行動によって、一瞬で永遠に失われてしまいました。
「お金を出してあげたときは、あんなに感謝してくれたのに。息子が裏切ったら、親の私たちまで一括りに捨てられてしまうのね……」
ヨシコさんは、誰も来なくなった静かなリビングで、かつて孫が遊んでいたおもちゃをみつめながら、ぽつりと呟きました。
年金25万円という安定した老後を手に入れたはずの60代夫婦。しかし、彼らを待っていたのは、息子の罪を代わりに背負わされ、「さんざん尽くしたお嫁さん」と「最愛の孫」から存在ごと抹消されてしまった、あまりにも寂しく、理不尽さすら感じる余生でした。
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