現役時代の消費行動を高齢期まで引きずり、退職後に家計が破綻するシニア層。手軽さの裏に高額な手数料が潜む「リボ払い」の隠れ負債により、平穏な老後を一瞬で崩壊することも。定年直後に巨額の債務が発覚し、家族の危機に瀕した夫婦の事例から、老後の家計管理の在り方を考えます。
〈退職金2,000万円〉定年60歳夫の「リボ払い」残債300万円が発覚。優雅な老後を夢見た58歳妻が、深夜に離婚届を取り寄せた修羅場 (※写真はイメージです/PIXTA)

誰もが羨む「優雅な老後」のはずが一転

「定年後は2人で旅行でも行こうと話していました。それまで仕事ばかりでしたから」

 

関東地方に暮らす高橋美智子さん(58歳・仮名)は、当時の状況を振り返ります。夫の修一さん(60歳・仮名)は、上場している大手メーカーを定年退職したばかりでした。長年、営業職の管理職として働き、周囲からも厚い信頼を寄せられていたそうです。

 

退職金は約2,000万円で住宅ローンは完済。老後の資金計画に問題はないはずでした。しかし、退職から1カ月後、美智子さんは修一さんのデスクに置かれたクレジットカードの利用明細書を目にします。そこに記載されていたのは、リボ払いの利用残高「298万円」という数字でした。

 

「問い詰めると、夫は最初は『大したことない』と誤魔化そうとしました。でも、引き落とし口座の残高は底を突いていたのです」

現役時代の「見栄」が生んだ隠れ負債

修一さんがリボ払いを利用し始めたのは、5年ほど前に管理職としての交際費や、周囲への見栄から高級時計やスーツをカードで購入したことがきっかけでした。

 

「毎月の支払額が一定だったので、やりくりできている錯覚に陥っていました」と修一さんは語ります。

 

リボ払いは、利用金額に関わらず毎月の支払額を一定に抑えられる反面、実質年率15%前後の手数料が発生します。
修一さんは「退職金が出れば一括で返済できる」と考えていましたが、毎月の支払いの大半が手数料の返済に充てられ、元金がほとんど減らないまま、利息が膨れ上がっていたのです。

シニア層に広がるリボ払いの罠と統計データ

国民生活センター『2024年度 全国の消費生活相談の状況 -PIO-NETより-』によると、消費生活相談の契約当事者は70歳以上の割合が26.2%と過去最高を更新しており、高齢者の金銭トラブルの増加が浮き彫りになっています。
実際、シニア層からの「フリーローン・サラ金」に関する相談では、「多重債務」や「クレジットカード」の利用、「金利・利息」に関する悩みが上位を占めています。

 

また、日本弁護士連合会『2023年破産事件及び個人再生事件記録調査』でも、こうしたシニア層の苦境が数字に表れています。同調査によると、破産債務者に占める「70歳代以上」の割合は11.84%と前回調査から大幅に増加し、1997年以降で過去最高となりました。また、多重債務に陥った原因として「クレジットカードによる購入」も増加傾向にあります。

 

修一さんのように、現役時代のクレジットカード利用が膨らみ、定年後の生活を脅かすケースは決して珍しいことではないのです。