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高齢者間の「資産格差」と支援の実態
良かれと思ってお祝いを買いに行っただけなのに、なぜこれほど惨めな思いをすることになってしまったのでしょうか。その背景には、現代の高齢者間における「資産格差」と、それによる子ども世代への資金援助の実態があります。
厚生労働省『令和6年 国民生活基礎調査』によると、高齢者世帯の1世帯当たり平均所得金額は318.3万円、中央値は253万円です。収入が年金だけで年420万円という加藤さん夫婦は、税金等を引いた年間所得を289万円ほどと考えると、一般的な高齢者世帯の平均を大きく上回る水準に位置しています。
一方で上には上がいて、高齢者世帯の上位25%は年収ベースで約560万〜620万円程度。上位10%になると年収790万~850万円程度に達します。これらは年金以外にも、給与や配当などの収入がある限られた高齢者だけが到達できる水準といえます。
また所得だけでなく、保有する「金融資産」でも格差は顕著です。金融経済教育推進機構『家計の金融行動に関する世論調査 2025年(二人以上世帯)』によると、70代世帯における金融資産保有額(非保有世帯を含む全体)の平均値は2,416万円ですが、より実態に近いとされる中央値は1,178万円にとどまります。
この「平均値が中央値の2倍以上」という大きな乖離は、一部の富裕層が全体の平均を極端に押し上げている証左です。加藤さん夫婦の6,000万円という貯蓄は間違いなく上位層に入りますが、上にはさらに圧倒的な資金力を持つ層が存在しており、それが今回「孫への資金援助」という場面で残酷な格差として可視化されてしまったといえるでしょう。
実際に同調査における高齢者世帯の生活意識を見ると、「苦しい」と答えた割合が48.5%にのぼる一方で、加藤さん夫婦のように「ゆとりがある」と答えた世帯も存在し、高齢層内部での二極化が進んでいます。
今回の件を経て、加藤さん夫婦と長男夫婦の間には、微妙な空気が流れるようになってしまいました。美咲さんの無邪気な言い方にプライドを傷つけられた恵子さんは、「私たちの経済力では、向こうのご実家には敵わないということなのでしょうか」と寂しげに話します。
しかし、こうした家柄や資産の格差による衝突を回避するためには、子世代が間に立ち、事前の丁寧なすり合わせを行うことが大切です。また親世代も、決して他家と比べず、“うちはうち”という割り切った意識を持つことが重要になるのではないでしょうか。