定年や早期退職を機に、地元に戻る人も。セカンドライフは地元でのんびりと――。しかし、理想と現実のギャップに直面し、悩む人も珍しくありません。念願の地元Uターンを果たしながらも、想定外の壁に突き当たった男性のケースを通して、新たなライフスタイルの在り方を考えます。
「こんなはずじゃなかった…」〈退職金2,400万円〉で地元へUターンした57歳男性、わずか1年で「東京の賃貸」へ舞い戻った想定外の理由 (※写真はイメージです/PIXTA)

東京での暮らしに疲労感。地元に戻る決断をしたが…

「東京は何かと忙しすぎる。定年後は地元に戻ってのんびり過ごしたいとずっと考えていました。まさか、わずか1年で東京へ戻ることになるとは思いませんでした」

 

遠藤和彦さん(58歳・仮名)。大学進学を機に上京し、都内のIT関連企業に就職。50代半ばを過ぎた頃、実家の両親が相次いで他界し、地方にある実家を相続したことが転機となります。

 

誰も住まなくなった実家の管理問題と、長年抱いていた地元へ戻りたいという気持ちが一致。57歳のとき、会社の早期退職優遇制度に応募し、地元に戻る決意を固めます。

 

「地元で再就職しようと考えていましたが、年も年だし、正社員は難しいと思っていました。ただ割増しとなった退職金があれば、正社員にこだわる必要はない。十分、働いたし」

 

遠藤さんは、住んでいた東京の賃貸マンションを解約して故郷へとUターンしました。案の定、正社員での再就職はかなわなかったものの、配送の仕事をスタート。給与はそれまでの3分の1になりました。それでも最初の1ヶ月ほどは、充実感でいっぱいだったといいます。

 

しかし、次第に遠藤さんは孤独感を抱くようになります。

 

「高校までの親しい友人は、みんな地元を離れたままでした。だいぶ前から、地元には両親以外いなかった。そのため、一から人間関係を再構築しなければならなかったんです」

 

総務省『住民基本台帳人口移動報告(2025年結果)』によると、東京圏(東京、神奈川、埼玉、千葉)への人口の転入超過は続いており、特に若年層の流出が地方の課題となっています。遠藤さんの故郷も例外ではなく、かつての友人のコミュニティは残っていませんでした。

 

これから地元で生きていくのだからと、地域のボランティア活動や市民講座に顔を出し、人間関係を築こうと試みました。しかし、50代後半になってから、一から新しいコミュニティに溶け込むのは容易ではなく、次第に疲弊していったそうです。

 

「地元を美化していたのでしょうか。思い描いていたような暮らしではなく、『こんなはずでは……』とため息をつくことが多くなりました」