相続した実家の処分に困っていた状態から一転、高額で売却して大金を手にできた――。まさに、夢のようなラッキーといえる状況です。しかし、棚ぼた的に大金を手にすると、平常心を失い、あっという間に使い切ってしまうリスクも。今回は、実家を思いがけない金額で買い取ってもらえた会社員が、最後にはお金も職も失ってしまった事例から、大金を手にした場合に資産を守る方法を、CFPの松田聡子氏が解説します。
「金がない、働く場所もない」築52年・商店街に佇む古びた実家が“まさかの5,000万円”に。“棚ぼたの大金”に有頂天の49歳息子だったが…わずか3年後に直面した「哀しすぎる現実」【CFPが解説】
「棚ぼた」の大金が判断力を狂わせる――転落の構造
卓也さんのケースは、決して特異な例ではありません。相続や不動産売却による「不労所得的な大金」を手にしたとき、人はリスク感覚が鈍化しやすいといわれています。自分で稼いだお金と違い、もともとなかったお金という感覚が、損失への警戒心を薄めてしまうと考えられます。
加えて、卓也さんが陥ったのが“ビギナーズラックの罠”です。投資を始めた時期が相場の好調期と重なると、市場の追い風を自分の実力と混同しやすくなります。
利益が出ている間は自信が膨らみ、より大きなリスクを取るようになる――この心理の連鎖が、FXや信用取引といったレバレッジ投資へつながります。レバレッジとは少ない元手で大きな取引を行う仕組みで、相場が想定と逆に動いた場合、損失は一気に加速するのです。
さらに深刻なのが、退職という選択です。5,000万円という金額は、一見すると「10年以上生活できる」ように見えます。しかし会社員が退職すると、健康保険料・
そして、50代での再就職には厳しい現実があります。厚生労働省「令和6年雇用動向調査」によると、50〜54歳男性の転職入職率はわずか4.7%、55〜59歳では4.3%にとどまります。転職入職率とは就業者数に対する、過去1年間に「転職して新しく入ってきた人」の割合です。
転職が活発な20代〜30代前半に比べて半分以下に下がり、50代になると現状維持を選ぶ人が増えるだけでなく、中途採用市場における50代向けの受け皿(求人)自体が限定的であることが浮き彫りとなっています。
同調査では、55〜59歳で転職した男性のうち、賃金が減少した割合は36.6%と、増加した27.4%を大きく上回っています。空白期間が長く、直近の職歴が専業投資家ともなれば、採用はさらに狭き門となるでしょう。
