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60歳定年…まだ会社に貢献したいと思っていたが
大手メーカーで営業本部長を務めた高橋正雄さん(60歳・仮名)。定年を機に、同じ会社で週4日の嘱託社員として再雇用されました。
現役時代は数百人の部下を率い、数億円規模のプロジェクトを動かしてきました。しかし、現在の役職は「嘱託員」です。かつての部下が上司となり、与えられる仕事は『営業サポート』という名の雑務。営業資料のコピー取りや過去の契約書のPDF化といったものでした。
「会社のために人生を捧げてきた自負がある。再雇用となり、これまでのノウハウを還元できると思っていた。なのに、仕事は誰もができるものばかり。『私でなくてもいいのでは』という言葉が、何度口から出そうになったことか」
高橋さんは当時の心境をそう振り返ります。さらに給与は現役時代(月収90万円)の3分の1以下に激減(月収28万円)。それでも「この会社に残る意味がある」と言い聞かせてきたといいます。
しかし、ある日、給湯室から聞こえてきた声が高橋さんの自尊心を崩しました。
「あの人、まだ会社にいたんだ」
「そう、まだ現役気取りでアドバイスしてくるからね。正直、邪魔だよ」
声の主は、かつて高橋さんが指揮した元部下。高橋さんはその場に立ちすくみました。そして、誰にも見られないよう多目的トイレに駆け込み、鍵を閉めて声を殺して泣いたといいます。
「自分が惨めで、情けなくて、涙が止まりませんでした。私は『まだ組織の役に立てる』『会社に貢献したい』と考えているのに、周囲は『ただ会社にしがみついている人』としか見ていなかった。慕ってくれていると思っていたかつての部下にとっても、私の存在は邪魔なだけでした」