親の生活や介護を支える現役世代が経済的に困窮する「親子共倒れ」。ネット上では「世帯分離をすれば公的負担が軽くなる」といったノウハウが散見されますが、万能というわけではありません。ある母子のケースから、日本の社会保障の落とし穴と打開策をみていきます。
「お母さん、ごめん。もう無理…」53歳娘、〈年金月8万円・82歳母〉への仕送りも限界。ネットで見つけた裏技も使えず「どう、生きていけばいいのか」 (※写真はイメージです/PIXTA)

ネットで見つけた「世帯分離」という情報

さらに節子さんが転倒による大腿骨骨折で入院。退院後は介護量が増え、特別養護老人ホーム(特養)への入所も検討する状況となりました。

 

美由紀さんはインターネットで情報を調べるなかで、「世帯分離によって介護施設の費用負担が軽減される場合がある」という説明を目にします。実際、介護施設の食費・居住費に関する軽減制度は、本人や世帯の課税状況などによって判定されるため、世帯分離によって負担が軽くなるケースもあります。

 

しかし、制度の適用は所得や資産状況など個別条件によって異なります。節子さんには過去の自宅売却による譲渡所得があり、その影響で住民税課税世帯と判定されていました。そのため、世帯分離を行っても、介護施設の食費・居住費を軽減する「負担限度額認定」の対象にはなりませんでした。

 

「ネットの情報だけで解決できると思い込んでいました。実際には個別事情で制度の扱いが変わることを知りました」

 

特養は民間施設より比較的費用を抑えやすい一方、課税状況や居室タイプなどによっては一定の自己負担が発生します。節子さんの年金だけでは不足分を賄えず、美由紀さんが継続的に負担することも難しい状況でした。美由紀さんは、これ以上の経済的支援が困難であることを母に伝えました。

 

「お母さん、ごめん。もう無理。もうどう生きていけばいいのかわからない……」

 

限界を迎えた美由紀さんは、自治体の地域包括支援センターや社会福祉協議会へ相談。そこで、インターネット上の一般論ではなく、個別状況に応じた支援策を提案されたといいます。

 

専門職からは、ケアプランの見直しに加え、「高額介護サービス費制度」の活用について説明を受けました。これは、介護サービスの自己負担額が一定上限を超えた場合、超過分が払い戻される制度です。また、美由紀さん自身についても、減収に伴う住民税や医療費負担軽減制度の案内が行われました。さらに、社会福祉協議会を交えながら、節子さんの今後の生活設計や、公的支援制度の利用可能性についても継続的に検討が進められたといいます。

 

「親の面倒は子どもが見るべきだと思い込み、ネットの情報だけで判断していました。でも、まず専門機関に相談することが大切だと実感しました」