親の生活や介護を支える現役世代が経済的に困窮する「親子共倒れ」。ネット上では「世帯分離をすれば公的負担が軽くなる」といったノウハウが散見されますが、万能というわけではありません。ある母子のケースから、日本の社会保障の落とし穴と打開策をみていきます。
「お母さん、ごめん。もう無理…」53歳娘、〈年金月8万円・82歳母〉への仕送りも限界。ネットで見つけた裏技も使えず「どう、生きていけばいいのか」 (※写真はイメージです/PIXTA)

善意から始まった「毎月10万円」の仕送り

「私は独身だから面倒を見なければいけないと思い込んでいました。でも、それがお互いを追い詰める結果になるとは思わなかったです」

 

都内のIT関連企業で働く田中美由紀さん(53歳、仮名)は、当時の状況をこのように語り始めました。当時の田中さんの月収は手取り約38万円で、独身の会社員として安定した生活を送っていました。

 

事の発端は、地方の実家で一人暮らしをしていた母親の節子さん(82歳、仮名)が、3年前に体調を崩したことでした。節子さんの収入は、亡くなった夫の遺族年金を含めて月約8万円。貯蓄を取り崩しながら生活していましたが、通院の増加や物価高の影響も重なり、生活費への不安が大きくなっていきました。

 

「母から生活費が足りないと言われたとき、深く考えずに5万円を振り込みました。それが毎月になり、介護費なども重なって、仕送り額は10万円に増えました」

 

自身の給料から10万円を差し引いても、当初は生活を維持できていました。

 

しかし、その後、美由紀さん自身が大病を患います。仕送りを始めて1年ほど経った頃、美由紀さんは体調不良から病院を受診し、大病が判明。長期療養のため休職し、最終的には退職を余儀なくされました。治療後に再就職したものの、勤務時間を短縮した影響で、再就職先の月収は手取り約25万円まで減少しました。

 

厚生労働省『令和4年 国民生活基礎調査』によると、親に仕送りをしている世帯は全体の2.0%。一方、1世帯あたりの平均仕送り額は月6.7万円となっています。

 

「自分の生活を維持するだけで精一杯。でも仕送りをやめれば母の生活が成り立たないかもしれない……」

 

自身の健康不安に加え、手取り25万円から10万円を仕送りし続ける生活は、美由紀さんを精神的にも肉体的にも追い詰めていきました。