近年、働き方の多様化や子育て環境の充実を求め、地方への移住を選択するケースが増加しています。「妻の実家の近くであれば、育児のサポートを受けやすい」という動機も、移住を決断する大きな要因のひとつのようです。しかし、よかれと思って決断した移住が、思わぬ結果を招くこともあります。理想を掲げて地方へ移住したものの、わずか90日で単身、東京へ戻る決断をした男性の事例を通じ、地方移住と親族間における適切な距離感についてみていきます。
「もう無理、お義母さんとは暮らせない…」妻の故郷に移住した〈月収38万円・36歳男性〉、わずか3ヵ月で東京行きの新幹線に乗り込んだ理由 (※写真はイメージです/PIXTA)

転職先での孤立と、妻の豹変

大輔さんをさらに追い詰めたのは、家庭内での味方の不在でした。転職先の職場では「東京から来た余所者」として、なかなか輪に入れず、ストレスが溜まっていました。その状況で義母から、「東京の人は冷たいわね」「そんな働き方では出世できないわよ」と、自身の価値観に基づいた批判を繰り返されます。

 

妻に助けを求めても、返ってくるのは期待した言葉ではありませんでした。

 

「お母さんは良かれと思って言っているの。せっかく移住したんだから、もっとこの土地に馴染む努力をしてよ」

 

大輔さんの孤立に気づこうとしない妻。それどころか、次第に言葉遣いや考え方が美津子さんに似ていく妻を見て、大輔さんは「ここは自分の居場所ではない」と確信したといいます。

 

そして移住からちょうど3ヵ月が経った週末。義母が、大輔さんの許可なく離れのクローゼットを整理し、「こんな派手な服はもう捨てなさい」と説教を始めたとき、大輔さんのなかで、ぷつんと糸が切れました。

 

「もう無理だ。お義母さんとは、一緒に暮らせない」

 

大輔さんは最低限の着替えだけを鞄に詰め込み、妻と義母が呆然とするなか、夜の新幹線に飛び乗りました。

 

「新幹線が東京駅に着いたとき、『帰ってきた』とホッとして。私には、少々遠いと思うくらいの距離感のほうがあっているのかもしれません」

 

その後、大輔さんは正式に辞表を出し、知人の伝手で再就職活動を始めました。妻がこのまま実家での暮らしに固執するなら、離婚もやむ得ないと考えているといいます。