(※写真はイメージです/PIXTA)
突然届いた拒絶の通知
神奈川県内にある築40年の庭付き一戸建て。高橋明(75歳・仮名)さんと妻の幸子(72歳・仮名)さんは、大型連休が来るたびに、疎遠になっている家族のことを思い出すといいます。
「ゴールデンウィークなら、子どもや孫が遊びに来たりして賑やかなのが普通でしょう。でも私たちには、そのような光景とは無縁なんですよね」
それは5年以上前の連休が明けたころ、1通のLINEがきっかけでした。
「二度と関わらないでほしい。もう実家には帰らない」
一人息子の大輔さん(仮名・45歳)から届いたメッセージは、それだけでした。ちょうど夫婦宅へ帰省し、楽しい日々を過ごして帰った直後のことです。以降、電話をかけてもほとんど繋がらず、メッセージも既読にならなかったといいます。幸子さんは当時の困惑をこう語ります。
「何かの間違いだと思い、何度も画面を確認しました。新しい布団を干し、孫の好物のお菓子も用意して迎えたんですよ。嫁のスマートフォンにも連絡を入れましたが、応答はありませんでした」
ただ、今年のゴールデンウィークにはちょっとした変化がありました。大輔さんからの電話です。後期高齢者になった明さんを心配し、近況を尋ねる連絡でした。その話の延長で、なぜ疎遠になってしまったのか、理由を尋ねたといいます。時間が経過し、少しは話をしてもいいと思ったのでしょう。大輔さんは、ぽつりぽつりと話し始めてくれました。
最初のきっかけは、さかのぼること10年前。大輔さんに第一子が誕生した際の出来事です。当時、幸子さんは産後の手伝いのために1ヵ月間、長男夫婦の自宅に泊まり込みました。そこで幸子さんは、育児に奔走する嫁に対し「母親ならこれくらいできて当然」「家事は女性が担うもの」といった自身の価値観を繰り返し伝えていました。
明さんは当時を振り返ります。
「私たちは良かれと思って助言していたつもりでした。当時は嫁も黙って聞いていたので、納得しているものだと思い込んでいたのです。しかし息子によれば、それは助けではなく、単なる干渉だったようです」
以降、家族の交流は盆や正月の短時間のみという状態が続いていました。仕事で忙しい長男夫婦ならそれが当たり前だと、明さんも幸子さんも違和感は覚えなかったといいます。また、自身の退職金から大輔さんの住宅ローンの一部を援助したこともあり、「親の意見を尊重するのは当然だ」とも思っていました。
そして決定的なことが起きたのが、あのLINEが送られてきた大型連休でした。久々の帰省計画に際し、幸子さんが「今回の帰省で、将来の介護や実家の管理についても具体的に詰めましょう。長男なのだから自覚を持って」とメッセージを送ったことが決定打となったのです。
大輔さんは電話口でこう告げたといいます。
「母さんの言葉は、僕たちにとっては命令でしかなかった。お金を出してくれたことには感謝しているけれど、それを理由に僕たちの生活や将来を縛らないでほしかった」
明さんは、電話を切ったあとの沈黙を忘れません。
「金銭的な援助が、親子の絆を強くすると思っていた。でも実際には、その援助が息子たちを追い詰めていたんです」