金利上昇といっても、世界的にみればまだまだ低金利の日本。「低金利で借りて、高利回りで運用する」――。新NISAの普及とともに、この投資理論を住宅ローンに適用する若年層が増えています。月々の支払額を極限まで抑え、浮いた資金を市場に投じる戦略は、一見すると合理的です。しかし、この「レバレッジ」を効かせた家計設計が、いかに個人のライフプランに影響するのか。その副作用を1級ファイナンシャルプランナー技能士の川淵ゆかりFPが紐解きます。※プライバシー保護の観点から、相談者の個人情報および相談内容を一部変更しています。
「住宅ローンの金利より、新NISAの利回りが高いから」月収41万円・30歳サラリーマン、“80歳完済・50年ローン”は冷静に、アリか?【1級FPの回答】 (※写真はイメージです/PIXTA)

多くの人が「住まいを購入しようと決める時期」はどんなタイミングか?

住まいを購入しようと決めるのは、往々にして家計に余裕がある時期です。余裕がないと「家を買おう!」なんて思いません。Aさんも外資系企業で活躍されており、現在は子どももおらず、結婚相手は共働きで、家計には比較的余裕のある時期でした。

 

ですが、昔のように“年功序列”で給料は右肩上がりの保障はありません。さらに、“終身雇用制度”も崩壊して、会社にずっといられるとも限りません。年々、家計の余裕はなくなってくる可能性もあるでしょう。昨今では、すでにAIの進化やITスキルのある若手の台頭がホワイトカラーの立場を脅かしています。

 

・40代、50代と進むにつれて、収入はどうなるか?

・定年退職後まで住宅ローンが残った場合、老後も働けるか?

 

一度、立ち止まって考えてみましょう。もし不安を感じたのであれば、まずは自分自身の「稼ぎ続ける力(スキル)」への投資を優先すべきかもしれません。

筆者が実際に経験した住宅ローン返済中の想定外

投資は“続けられた人だけ”が恩恵を受けます。つまり、Aさんの前提で住宅ローンを組む場合、途中でやめた瞬間、50年ローンの重さだけが残ることになるのです。

 

住宅ローン返済中に支出増になり得る原因でまず考えられるのは、子どもの成長に伴う生活費や教育費のアップです。親としては、習い事もさせたいでしょうし、「私立に行きたい」といわれれば、私立に行かせたいでしょう。“私立高校無償化”とはいえ、無料になるのは“授業料だけ”です。受験のために塾や家庭教師も必要になってきます。

 

家計を圧迫するのは、教育費の増加だけではありません。ここで少し、筆者自身の話をさせてください。実は筆者自身、住宅ローン返済中に突然親の介護が始まりました。結果として10年以上ものあいだ仕事に影響が出てしまい、経済的にも精神的にも非常に苦労した経験があります。

 

住宅ローン返済中に家計の収支にどのような変化があるか、想像してみてください。そして、家計が厳しくなってきたとき、「住宅ローンの返済のお金」と「投資に回すお金」、どちらを優先しますか? 当然、住宅ローンの返済ではないでしょうか?

 

生活が苦しくなったときに、積み立てをストップしたり、これまでの運用分を取り崩したりするケースは少なくありません。そうなると、残るのは老後まで続く住宅ローンだけ、となります。

「団信」に加入しているから大丈夫?

団体信用保険も種類が増え、「がん団信」や「三大疾病団信」などもあり、病気になっても安心なように思えます。しかし当然ながら、住宅ローンの返済に困ったときに、都合よく病気になるものでもありません。そして、病気になったからといって必ずしも住宅ローンがチャラになるとは限らないことをご存じでしょうか。

 

「がん団信」の場合では、

 

・「上皮内がん」「初期がん」が対象外、または一部保障のみの場合がある

・特定の部位のがんや、がん以外の重い病気や障害は保障外のことがある

 

などといったように、「がんになったのに、約款の条件を満たさず返済が続く」というケースもあります。加えて治療費も上乗せされると、家計が大きく圧迫されるでしょう。そうならないように、すでに住宅ローンを利用している人は、団信の内容を確認してみてください。

 

また、筆者の介護の例のように、ローン契約者以外の家族が病気やケガ、介護状態になり、支出が増えてしまうこともあります。ペアローンの利用者も多いようですが、夫婦のどちらかの収入がダウンすると、一人で住宅ローンを背負わなければなりません。住宅ローンは最初が肝心です。無理な借り入れはしないように、将来をしっかりと考えて計画的な利用をするようにしましょう。