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60万人強の中高年の引きこもり…8050問題に発展するリスク
この事例は、特殊な家庭の問題ではありません。高齢の親が年金で中高年の子どもの生活を支える構図は、いま全国で広がっています。内閣府『こども・若者の意識と生活に関する調査』(2022年度)によると、15〜64歳の引きこもり状態にある人は全国で推計146万人で、50人に1人という水準です。また中高年層(40〜64歳)の引きこもり推計は約61.3万人と、若年層と同程度かそれ以上の割合で深刻化しています。
ここでいう引きこもりは、「ふだんは家にいるが、コンビニ等には出かける」「自室からは出るが家からは出ない」など、社会参加をしない状態が6ヵ月以上続いていることを指します。引きこもりというと、自室に閉じこもり、料理は毎回家族が部屋の前まで運び、自室を出るのはトイレとたまのお風呂だけ……といった状況を想像しがちですが、世間一般のイメージよりもアクティブなケースも含まれます。
ここで問題なのが、中高年の引きこもりです。親の介護や高齢化により、いわゆる「8050問題(80代の親が50代の子どもを養う)」に発展するリスクが高いといわれています。
成人している子どもの場合、配偶者とは異なり、遺族年金を受け取ることができません。年金保険料も親が払っているとなると、親が亡くなったあとは滞納のリスクが高まります。親のキャッシュカードを使い、無断で預金を引き出していた佐藤さんの息子。このままでは、佐藤さんに万一のことが起きた際には、生活が破綻してしまうでしょう。
高齢の親(80代)と引きこもり等の子(50代)が困窮・孤立する「8050問題」の解決には、本人への介入だけでなく、家族全体を対象とした包括的な評価(アセスメント)と支援体制が不可欠です。
具体的な対応・予防策の鍵は、多職種・多機関の協働によるネットワークの構築です。親の介護相談などを機に地域包括支援センターが問題を早期発見し、制度の縦割りを越えて生活困窮や障害福祉窓口などと連携する総合的な相談体制が重要となります。
さらに、家族会やNPOなどの民間支援と、行政による公的支援を連携させる手法も有効です。これにより、自らSOSを出せない潜在的な孤立世帯との接点を作り、介入と継続的な「見守り」を行うことで、親が亡くなったあとの深刻な事態や共倒れを未然に防ぐことができます。