近年、SNSを通じた投資詐欺の被害が急増しており、なかには現役時代に相応の役職を務めた人がターゲットになるケースもあります。定年退職後の孤独や社会的なつながりの欠如が、詐欺師につけ入る隙を与えてしまう――。SNSのDMをきっかけに資産を失った男性のケースを通じ、現代社会の歪みをみていきます。
「人生、終わりました…」〈退職金3,000万円〉60歳元部長の告白。SNSの「1通のDM」で〈1,000万円〉をドブに捨てた「元勝ち組の末路」 (※写真はイメージです/PIXTA)

「自分は絶対騙されない」と過信している人は危険

警察庁『令和8年の特殊詐欺の手口についてのお知らせ』によると、令和8年3月末における特殊詐欺の認知件数(暫定値)は1万1,093件。そのうち3,397件はSNS型投資詐欺(前年比191.6%)、1,308件はSNS型ロマンス詐欺(前年比15.5%)であり、SNSを発端とする事案が急増しています。

 

SNSをきっかけとした「未公開株」を名目とした詐欺事件は、以前から多く報告されてきました。典型的なのは、SNS広告やDMで接触したあと、LINEグループに誘導する手法です。

 

グループ内で交わされる「儲かった」という投稿(もちろんサクラ)で信用させ、偽のアプリやサイトへ誘導。画面上では利益が出ているように見せますが、いざ引き出そうとすると応じず、最終的に連絡が途絶える……というパターンです。

 

SNS上のやり取りだけでは相手の特定が難しく、証拠不十分とされたり、民事トラブルと判断されたりして、被害届が受理されないことも珍しくありません。また「詐欺被害のお金を取り戻します」と近づいてきて、さらなる被害に遭う二次被害のケースも散見されます。

 

2018年と少々古い調査ですが、警察庁が行った『オレオレ詐欺被害者等調査』では、「自分は被害に遭わないと思っていた」との回答が被害者の78.2%を占めていました。「自分は大丈夫」という過信が警戒意識を下げ、結果的に騙されてしまうという流れがあります。

 

「SNSで知り合った相手から投資を勧められたら、まずは詐欺を疑うこと」「振込先が個人名義の口座である場合は、絶対に振り込まないこと」といった心構えが、被害を未然に防ぎます。

 

また定年退職という大きな転機において、社会的な孤立につけ込まれ、被害に遭うこともあります。定年前から社外でのつながりを構築しておくことは、被害防止の観点においても極めて重要です。