近年、高齢者を狙った強盗事件が多発し、社会的な不安が広がっています。防犯意識の高まりから、自宅内に独自の隠し場所を作る高齢者も少なくありません。ある家庭の遺品整理のケースを通し、親が良かれと思って行った「資産の隠匿」が招く相続の混乱について見ていきます。
「なんだこれ…」年金月15万円・83歳母が逝去、GWに遺品整理で訪れた実家の〈知られざる天井裏〉。そっと開けた子どもたちが目撃した「衝撃の光景」 (※写真はイメージです/PIXTA)

天井裏から現れた驚愕の遺産

千葉県内の寺院で母・和子さん(享年83)の一周忌を終えたばかりだという田中義行さん(54歳・仮名)。都内の不動産会社で管理職を務める田中さんは、昨年の大型連休(GW)、妹の伊藤恵美さん(49歳・仮名)とともに実家の遺品整理を行っていました。

 

「母が亡くなったのは一昨年の冬、寒さの厳しいときでした。本格的な片付けは連休にまとめてやろうと妹と話していたんです。母は生前、月15万円ほどの年金で慎ましく暮らしていると言っていましたから、1日か2日で終わる作業だと思っていました」

 

作業の2日目、押し入れの天袋を整理していた田中さんは、天井板の隅に不自然な隙間があることに気づきました。懐中電灯で照らし、板をスライドさせると、そこには新聞紙で何重にも包まれた長方形の塊が並んでいました。

 

「最初は建材か何かだと思いました。しかし、一つ下ろしてみるとずっしりと重く、包みを剥がすと100万円ずつの帯封がされた札束が現れたんです。妹と二人で、しばらく固まってしまいました」

 

天井裏の隠しスペースからは、現金で合計2,000万円ほどが見つかりました。さらに和子さん名義の古い通帳も発見。生前の和子さんは、近隣で発生した強盗事件のニュースを見て以来、自宅の防犯に異常なほど執着していたといいます。業者を入れず、自力でこの収納スペースを作った形跡がありました。

 

「母は『泥棒に盗られるくらいなら、隠して墓場まで持っていく』と言っていたことがありました。当時は冗談だと思って流していましたが、本気だったようです」

 

しかし、この発見は田中さんたちにとって、手放しで喜べることだけではありませんでした。すでに相続税の申告準備を進めていた段階であり、これほど多額の隠し財産が出てきたことは、手続き上の大きな障害となったのです。

 

「母は子どもたちのために残したつもりだったのでしょうが、出所を証明できない現金は税務署への説明が難しくて…。すべてプロに任せたものの、結局、この1年間は追加調査や書類の整理などに追われて本当に疲れました。良かれと思った隠し事が、結果として大混乱を招いたんです」

 

「今となっては笑い話ですが…」と話す田中さん。「親に『いくらお金がある?』とは聞きづらいものですが、元気なうちに話し合っておいたほうがいい。本当に身に沁みました」と、実感のこもったアドバイスをくれました。