老後の収入を増やす手段として注目される「年金の繰下げ受給」。しかし、その選択が思わぬ結果を招くケースがあります。夫婦で堅実に老後設計をしていたはずの家庭が、想定外の制度によって収入を失う――。本稿では、実際のケースをもとに、見落とされがちな年金制度の落とし穴を解説します。
「え、たった月5,000円?」年金23万円の夫が急逝…65歳妻が絶句した「増やしたはずの年金」が消えた理由 (※写真はイメージです/PIXTA)

制度上は「正しい」が、見落とされやすい落とし穴

厚生労働省『令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況』で厚生年金保険(第1号)受給権者の繰下げ受給状況をみていくと、2,869万7,329人中、54万8,635人と全体の1.9%に留まります。5年前から人数としては倍以上に増えているものの、依然として少数派です。

 

また日本年金機構が示す通り、以下のルールは厳然として存在します。

 

・繰下げによる増額分は遺族年金に反映されない

・自身の老齢厚生年金がある場合、遺族年金は支給停止(差額支給)となる場合がある

 

つまり、「増やした年金が、そのまま配偶者に引き継がれるわけではない」という点が最大のポイントです。特に共働き世帯では、配偶者自身の年金額が一定水準に達しているケースも多く、結果として遺族年金がほとんど受け取れない可能性があるのです。

 

繰下げ受給は、長生きすればするほど有利になる制度です。しかし、その前提が崩れた場合、想定と大きく異なる結果を招くことがあります。

 

重要なのは、「いくら増えるか」だけでなく、「万一のとき、どうなるか」まで含めて判断すること。老後設計において、制度の仕組みを正しく理解しているかどうかが、そのまま生活の安定に直結します。

 

 

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