「何歳になっても我が子は可愛い」という親心。しかし、その優しさが30歳を過ぎた我が子の「自活する力」を奪っているとしたら、それは愛情ではなく「共依存」かもしれません。今回は、年金暮らしの65歳夫婦と二人の子どもの事例を通し、川淵ゆかりFPが「共依存関係」の落とし穴と脱却のヒントを紐解いていきます。※プライバシー保護の観点から、相談者の個人情報および相談内容を一部変更しています。
もう「お母さん」をやめてしまいたいです…年金22万円・65歳パート主婦が漏らした、悲痛な本音。実家にへばりつく38歳長男・32歳長女へ注いだ〈重い愛情〉のツケ (※写真はイメージです/PIXTA)

「温泉旅行」が、娘の意識を変えるきっかけに

退職してから毎日家にいることで、子どもたちを目の当たりにするようになった夫Bさん。業を煮やして、Aさんにある日、次のように持ちかけました。

 

「二人を置いて、1週間くらい旅行でも行こう」

 

Aさんはとても心配しましたが、夫は「腹が減ったら自分たちでなんとでもするだろ。ほっとけ」といい、強行することに。荷造りをしているあいだもCさんはなにもいいませんが、Dさんはなにやら焦っている様子。珍しく両親の前に姿をみせると、「ちょっと待って。どこ行くの? 兄さんと二人きりなんて無理。私も連れていってよ」といいました。

 

娘が久しぶりに外出する気になってくれたことを嬉しく思い、結局、夫婦はDさんを連れて3人で旅行に行くことに。

 

そうして、3人でおいしい食事を楽しみ、温泉で心身を温め、帰路についた3人。これまではなにも話さなかったDさんですが、夕暮れの後部座席でポツポツと心のうちを話しはじめました。

 

「あの……いままで、本当にごめんなさい。『このままじゃいけない』ってずっと思ってたんだけど、どうしても動けなくて。でも旅先でも気を遣ってくれる二人をみて、本当にこのままじゃいけないんだって思った。私、これからは外に出るようにします」

 

夫Bさんはこのとき、「娘は、本当は外に出たかったのか」と気づいたそうです。さらに、「息子も働けるんだから、母親と引き離せさえすれば、一人でなんとか生きていけるんじゃないか」と考えるきっかけとなりました。夫Bさんは息子について、「男は一人で暮らすことも大事なんだ。お前もいい加減に子離れしなさい」とAさんに告げます。初めは泣いてしまったAさんですが、次第に夫から息子にこれからについて話をすることを了承しました。

 

それからしばらくして、Dさんは病院の調理係のパートを見つけ、週3日・1日3時間ずつ働くようになりました。心なしか表情も少しずつ明るくなり、夕食は家族3人で囲むように。聞けば、同じ勤務先の技師の男性と懇意な様子。Dさんは男性の存在も影響しているのか自立することに前向きで、慣れたら勤務時間を伸ばす予定です。

 

一方、Cさんも妹の変化に刺激を受けたからか、父親からの叱咤を受けたからか、実家を出て、工場の寮に住むことに。寮では相変わらずゲームをしているようですが、同じ寮の仲間と飲みに出ることもあるそうです。

 

こうして、ゆっくり自立への道を歩きはじめた子どもたち。その一歩は小さくとも、ようやく長く続いた共依存の関係に変化の兆しがみえはじめました。親が高齢になってからの「共依存」は、誰の家庭にも起こり得る問題です。最悪の事態を防ぐためにも、親子が互いに自立し、老後を安心して過ごすための準備を早めに始めることが大切です。

 

 

川淵 ゆかり

川淵ゆかり事務所

代表

 

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