「何歳になっても我が子は可愛い」という親心。しかし、その優しさが30歳を過ぎた我が子の「自活する力」を奪っているとしたら、それは愛情ではなく「共依存」かもしれません。今回は、年金暮らしの65歳夫婦と二人の子どもの事例を通し、川淵ゆかりFPが「共依存関係」の落とし穴と脱却のヒントを紐解いていきます。※プライバシー保護の観点から、相談者の個人情報および相談内容を一部変更しています。
もう「お母さん」をやめてしまいたいです…年金22万円・65歳パート主婦が漏らした、悲痛な本音。実家にへばりつく38歳長男・32歳長女へ注いだ〈重い愛情〉のツケ (※写真はイメージです/PIXTA)

親も子もなかなか抜け出せない「共依存」の闇

Aさんの家庭は、いわゆる「共依存」の状態に陥っている可能性があります。「共依存」とは、親と子が互いに依存し合い、関係を断ち切れなくなる状態を指し、具体的には次のような例が挙げられます。

 

〇親が子どもの生活を全面的に支え続けている(家事・食事・生活費など)

〇子どもは自立の必要性を感じず、働かない、あるいは最低限しか家にお金を入れない

〇親は「心配だから」などと理由をつけて支援を続ける

〇家族内のコミュニケーションが断絶しているのに、現状を変えられない

 

お互いが納得しており、外部に迷惑をかけていないうちは家庭内の問題で済みますが、親の収入が減ったり、親が亡くなったりすると、こうした問題は一気に表面化します。

 

さらに、このままの生活がしばらく続くと、「8050問題」へと発展する危険性があります。「8050問題」とは、80代前後の高齢の親が、50代前後の無職・引きこもり状態の子どもを支え続ける状況を指します。親子ともに生活が困窮したり、社会から孤立したりするだけでなく、介護や医療の負担が重なり、虐待リスクが高まることもある深刻な社会問題です。

 

息子Cさんには「自分は働いて家にお金も入れている」という自負があり、食事や洗濯などを親がやってくれるのは当然だと感じている様子。

 

一方、娘Dさんは自室からあまり出てきませんが、両親が仕事に出ているあいだは部屋から出てきて、洗い物や洗濯などの家事をこなすことができます。内心は母親が大好きで、母親を尊敬し、母親のようになりたいと思っていましたが、長年ひきこもっている恥ずかしさから反発しており、自責の念とともに「なんとかしたいけどできない」という葛藤に苛まれているようです。

 

それぞれの内面は異なれど、このまま関係が固定化すれば、共依存が高齢期まで持ち越され、A家においても、8050問題に発展しかねません。

 

金銭面では、Aさん夫婦の年金収入は夫が月約16万円、Aさんが約6万円で、あわせて月22万円ほどです。夫婦は、子どもたちのせいでこれまで旅行にも行けず、子の結婚に伴う援助などの出費もなかったため、それなりの貯蓄もあります。しかし、それだけでは「家族4人分」の将来の生活を支えるには、どうしても心許ないものです。