経済的なゆとりがあるからといって、必ずしも心が満たされるとは限りません。十分な資産と年金に支えられながらも、深い孤独に沈む高齢者もいます。1人の男性が抱える切実な日常から、高齢男性における孤立の実態を見ていきます。
寂しい…〈年金月20万円〉〈資産3000万円〉東京郊外の戸建てに暮らす78歳男性。「スマホの待ち受け」を指でなぞり、今は亡き妻に語りかける孤独な夜 (※写真はイメージです/PIXTA)

高齢男性が陥る孤立の実態

内閣府の『令和3年度 高齢者の日常生活・地域社会への参加に関する調査』によると、人との付き合いが「ない」と答えた割合は、女性の7.9%に対し、男性は10.9%に達します。

 

高橋さんと同年代の「75~79歳の男性」では、約4割が人との付き合いのなさを感じており、社会的なつながりを維持することの難しさが浮き彫りになっています。仕事中心の生活から離れた後、自ら新たな人間関係を築くことに消極的になる男性特有の傾向が、統計からも見て取れます。

 

こうした孤独感は、配偶者との死別によってさらに加速します。同調査では、「自分は取り残されている」と常に感じる割合は、配偶者がいる人では2.3%ですが、死別した人では6.1%と2.6倍以上に跳ね上がります。

 

特に「ひとり暮らし」の場合、人との付き合いがないと常に感じる割合は14.7%にのぼり、配偶者と同居している層(7.8%)を大きく上回っています。テレビの音さえうるさく感じるほどの静寂は、こうした「単身×死別」という条件が重なった高齢者が直面しやすい現実といえるでしょう。

 

十分な資産や年金があっても、それが他者との会話や役割に直結するわけではありません。高橋さんが何度も点灯させるスマートフォンの画面は、かつて自分が確かに誰かとつながっていたことを確認するための、数少ない手段なのかもしれません。

お金では買うことのできない「心の拠り所」をどう確保するか……。長い余生を歩むうえで、すべての人にとっての課題だといえそうです。

 

 

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