総務省の調査では移住相談件数が過去最多の約40.8万件を記録するなど、地方移住への関心が高まっています。生活コストの削減を目的に移住を選択する子育て世帯もいる一方で、家賃が下がっても“目に見えない別のコスト”が家計を圧迫することも考えられるでしょう。本記事では、地方移住したものの、交通インフラが整備されていないために夫婦で車2台が必須となり、年間80万円の維持費と安くない物価の前に「貯蓄ゼロ」の生活を強いられる世帯年収570万円・30代夫婦の事例を紹介します。
「1台じゃ足りないなんて…」地方移住で家賃5万円・庭付き3LDKを実現し、歓喜した30代夫婦→想定外だった〈車社会〉の出費に悲鳴 (※写真はイメージです/PIXTA)

甘く見ていた地方の「車社会」…想定外だった“1人1台”の現実

「もちろん地方なので車社会なのは覚悟していて、家族用に1台持ってきたんです。でも、まさか1台じゃ生活できないなんて想像もしていませんでした……」

 

家の周辺は公共交通機関がほとんど機能しておらず、どこへ行くにも車が必要不可欠。当初は「家族で1台あれば大丈夫だろう」と考えていたサトシさん。しかし、車で通勤してしまうと、残されたミカさんは日中の買い物や子どもの病院、さらにはパート通勤すらできなくなってしまったのです。

 

結果として、サトシさんの通勤用とミカさん用として、夫婦でそれぞれ車を所有しなければ生活が成り立ちませんでした。慌ててミカさん用の中古の軽自動車をローンで購入したため、家計への負担はさらに増えてしまったのです。

 

車2台分のガソリン代をはじめ、毎年の自動車税、自動車保険料、そして定期的な車検代やタイヤなどの消耗品代を合わせると、車両のローン返済を除いた純粋な維持費だけでも年間で約80万円に達しました。

 

さらにサトシさんを悩ませたのが、日常的な買い物でした。近所にあるスーパーは競合店がないためか、都市部のスーパーよりも物価が高く、食費も決して安くは済みませんでした。

 

「確かに家賃は下がりました。でも、ガソリン代と保険料、それに意外と高い食費で家計は毎月カツカツです。子どもの将来のために移住したのに、まったく貯金ができないなんて本末転倒です……。これなら都会にいたほうがマシでした」

 

生活コストを下げるという最大の目的が果たせず、サトシさん夫婦は不安な日々を送っています。地方移住に伴う車社会の現実を甘く見ていた結果、余裕のない生活を強いられています。

 

[参考資料]

総務省「移住相談窓口等において受け付けた相談件数(令和5年度)」

国土交通省「二地域居住等の最新動向について(2023年)」

内閣府「令和6年度 高齢者の経済生活に関する調査結果」