(※写真はイメージです/PIXTA)
なぜ「売ればいい」は、机上の空論で終わるのか
「2億円の価値があるなら、売ればお釣りが出るはず」という周囲の助言は、実は現実味を欠いています。 国税庁『令和6年分 相続税の申告事績の概要』によると、相続財産の構成比において土地が占める割合は30.2%にのぼります。特に地価高騰が続く都心部では、斎藤さんのように「普通の会社員が、実家を相続しただけで数千万円のキャッシュを求められる」というケースが後を絶ちません。
まず斎藤さんを追い詰めたのは、相続税法における救済策「小規模宅地等の特例」の適用外という現実でした。 この制度は、亡くなった人と同居していた親族などが自宅を相続した場合、土地の評価額を最大80%減額できる強力なものです。しかし、斎藤さんのようにすでに独立して持ち家がある子が、一人暮らしの親の家を相続する場合、原則として特例は適用されません。2億円という評価額に対し、軽減措置なしで税率が直撃したことが、5,000万円という巨額の納税負担を生む要因となりました。
さらに実務上の大きな壁となるのが、相続税の申告期限です。 「死亡から10カ月以内」という厳格な期限に対し、相続登記や遺品整理、親族間の感情的な対立といった工程を積み上げると、時間はあまりに短く、結果として「売り急ぎ」を招きます。期限が迫り、買い主側に足元を見られた結果、相場から2割、3割と低い価格での「叩き売り」を余儀なくされるケースも珍しくありません。
金銭での一括納付が困難な場合、税務署への延納という選択肢もありますが、条件によっては年数%の利子税が発生します。また、土地そのものを国に納める「物納」は許可要件が厳しく、財務省の統計を見ても近年その利用件数は限定的です。 結局、斎藤さんのように金融機関から「つなぎ融資」を受け、利息を払いながら売却を待つのが、現実的な苦肉の策となるケースが少なくないのです。
斎藤さんのケースでは、急な相続の発生により苦境に立たされました。不動産は価値のある資産ですが、決して「すぐ現金になる資産」ではありません。親が一人で大きな家に住んでいる状況であれば、生前の対策や資産の見える化が不可欠です。
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