(※写真はイメージです/PIXTA)
負の連鎖を断つ決断
千葉県柏市に住む会社員の三浦和也さん(54歳・仮名)。秋田県内にある実家の墓を解体し、更地に戻す「墓じまい」を行いました。三浦家は4代続く家系であり、その墓には三浦さんの祖父母や父、さらにさかのぼる先祖の遺骨が埋葬されていました。
「父が亡くなってから3年間、私が管理を引き継ぎましたが、最終的に自分の代で終わらせる決断をしました。理由は単純です。このまま放置すれば、私の息子が多額の負債と手間を背負うことが明白だったからです」
三浦さんの実家がある集落は、最寄りの駅から車で40分ほどかかる山間部に位置しています。さらに、墓地自体が急斜面の山道を15分ほど歩いて登った場所にあり、車両の進入は不可能です。三浦さんは年に2回、往復の交通費と宿泊費を合わせて約12万円をかけ、草むしりと墓石の清掃のために帰省していました。
「最初は義務感で通っていました。しかし、長年風雨にさらされた墓石の土台に亀裂が入っているのを見つけたとき、石材店から『修繕には100万円以上かかる。重機が入らない場所なのですべて手作業になる』と言われました」
三浦さんは、当時大学生だった長男に一度だけ墓掃除を同行させた際、長男から「父さんがいなくなったら、僕が一人でここに来て、このお金を払い続けるの?」と尋ねられたといいます。
「その問いに、私は『そうだ』と答えることができませんでした。私自身、この墓に対して重荷だとしか感じていなかった。管理料の督促や修繕の心配をするたびに、なぜ亡くなった人のために、生きている人の生活が圧迫されなければならないのか――そんなやり場のない憤りを感じるようになりました」
決断を親族に伝えると、地元に残る叔父の三浦利雄さん(79歳・仮名)から猛烈な反対を受けました。「先祖の家を壊すのか」「長男としての自覚が足りない」といった電話が連日のようにかかってきたと振り返ります。
「叔父は伝統を口にしますが、具体的な管理費や修繕費を1円も負担しているわけではありません。私が『叔父さんは今後すべての費用を負担して管理してくれますか』と聞くと、返答に窮していました。結局、誰かが悪者になって断ち切らなければならなかったんですよ」
三浦さんは約150万円の費用をかけて墓石を撤去し、遺骨を取り出しました。父の遺骨は本人の希望通り散骨し、他の先祖の遺骨は都内の納骨堂へ合祀しました。
「墓をゴミ扱いするなと叱られるかもしれませんが、管理できなくなった墓は、所有者にとって処理の難しい廃棄物と同じですよね。更地になった場所を確認したとき、私は“先祖を蔑ろにした”という感覚よりも、“見えない束縛から解放された”という達成感が大きかったですね」
