(※写真はイメージです/PIXTA)
至る所に現金が隠されている実家
「本当に大嫌いでした」
神奈川県内の実家で暮らす会社員の佐藤美咲さん(52歳・仮名)は、そう言い切ります。嫌悪感の対象は、母・和子さん(82歳・仮名)が抱え続けていた多額の現金でした。和子さんは長年、銀行をほとんど利用せず、生活費の多くを現金で管理。「お金は自分で持っていないと不安なの」と繰り返していたと言います。
「昔は『こんなところにお金が!』と、まるで宝箱が色々なところに隠されているようで楽しかったのですが、このご時世、そんなことは言っていられません」
美咲さんは「こんなに現金を置いておくのは危ない」と何度も説得しましたが、和子さんが応じることはありませんでした。「銀行に預けても安心できない」というのが、その頑なな理由でした。転機となったのは、和子さんが体調を崩して入院したことです。自宅の整理を進めるなかで、美咲さんはタンスや引き出しの中から大量の現金を見つけました。複数の封筒に分けて保管されており、その総額は2,000万円にものぼりました。
「どうしてここまで……」
美咲さんは戸惑いを隠せなかったと振り返ります。一方で、どこにいくらあるのか全体像が把握できず、一部の所在がわからない状態もありました。家族内で確認作業を進めるなか、不安と緊張が続いたといいます。「やっぱり危ないじゃない」と、美咲さんは改めてリスクを痛感しました。
その後、和子さんが退院し、改めて話し合いの機会が持たれました。その際、和子さんは「昔、銀行がなくなるかもしれないと聞いたことがある」「自分で持っていれば、すぐ使える」と心中を吐露しました。さらに「人に頼らずに済むようにしたかった」とも語ったといいます。過去の経験や漠然とした不安が重なり、執着に近い現金管理を続けていたことが分かりました。
美咲さんは「理由は分かったが、このままでは困る」と考え、一部を金融機関に預けるよう提案しました。和子さんも最終的には折れ、現在は一部を口座で管理する形に改めています。ただし、すべてを預けることには依然として抵抗があり、現金を手元に残す状態は続いています。
