「東京に行けば、今とは違う自分になれるはず」――。そんな期待を抱き、住み慣れた土地を離れる若者は少なくありません。しかし、華やかなイメージとは裏腹に、厳しい経済的現実に直面し、行き場を失うケースも珍しくありません。ある男性の事例から、理想と現実の乖離を招く要因について考えます。
東京に行けば何かが変わると思ってた…月収25万円・27歳で上京した男性、5年後に直面した「過酷な現実」 (※写真はイメージです/PIXTA)

閉塞感から上京を決意したが…

「地元にいても、何も変わらない気がしたんです」

 

そう話すのは、佐藤健一さん(32歳・仮名)です。東北地方の人口数万人の町で育ち、高校卒業後は地元の専門学校に進学。その後、地元企業に就職しました。初任給は20万円ほどだったといいます。実家暮らしだったため生活に困ることはありませんでしたが、「このままでいいのか」という焦りがあったと振り返ります。

 

転機はSNSでした。東京で働く同級生の投稿が目に入ります。おしゃれなカフェ、夜景の見える部屋、休日のイベント。画面越しに映る生活は、まるで別世界のように見えました。

 

「自分もああなれるんじゃないかと思ったんです。地元では閉塞感を覚えていましたし、東京なら仕事も多い。収入も上がるだろうって」

 

27歳のとき、佐藤さんは会社を辞め、上京します。最初に就いたのは都内企業の営業職でした。何よりも惹かれたのは給与条件です。地元を離れる直前の月収は25万円。それに対し、転職先の求人広告には「未経験でも月収40万円以上可」と大々的に記されていたそうです。

 

しかし、現実は違いました。基本給は20万円。インセンティブがつけば50万円、あるいは100万円以上稼ぐ同僚もいましたが、成績が振るわなければ20万円から増えることはありません。

 

「上京して、特に家賃の高さがこたえました」

 

ワンルームの家賃は7万5,000円。加えて光熱費や通信費、食費がかかります。地元ではほとんど意識していなかった固定費が、毎月の収入を確実に圧迫していきました。気づけば、手元に残るお金はわずかです。

 

「貯金どころか、毎月ギリギリの状態で……」

 

さらに、仕事の環境も厳しいものでした。営業成績は常に数字で評価され、結果が出なければ肩身が狭くなります。転職も試みましたが、提示されるのは似たような条件の仕事ばかりでした。上京から3年後、転職を繰り返すなかで収入が不安定になり、ついに貯金を切り崩す生活に陥ります。

 

「東京に来れば変われると思っていたのに、むしろ選択肢が減った感じがしました」

 

32歳となった現在、月収は23万円と、地元にいたころを下回っています。さらに追い打ちをかけるのは、支出の多さと精神的な余裕のなさです。

 

「地元に戻るという選択肢もありますが、簡単に決断できるものではなくて……」