(※写真はイメージです/PIXTA)
判断を先送りした結果、続いた「父名義・長男負担」の構図
「売るなんて、正直考えていませんでした」
そう話すのは、岡本健一さん(45歳・仮名)です。岡本さんは妻と子ども2人とともに首都圏で暮らしています。地方にある実家には、もともと父・岡本徹さん(74歳・仮名)が一人で住んでいました。しかし5年前、体調の変化をきっかけに高齢者向け施設へ入居。それ以来、実家は空き家となりました。
このとき、実家の扱いについて明確な方針は決められていませんでした。名義は父・徹さんのまま。売却や賃貸といった具体的な検討も行われず、「いずれ考える」という状態で時間だけが過ぎていったといいます。その間も、費用は発生し続けます。固定資産税、火災保険料、庭の管理費、帰省時の交通費や軽微な修繕費――。これらの費用は、実質的に長男の健一さんが負担していました。
徹さんには月20万円程度の年金と1,000万円ほどの貯蓄があり、実家の維持費を払えないわけではありませんでした。しかし、施設の入居費や生活費を優先するなかで、実家に関する支出は後回しとなり、「こちらで払っておく」という形が自然と定着していったのです。
「いずれ相続する家だから、今払っても同じだと思っていたんですが……」
総務省「令和5年住宅・土地統計調査(2023年)速報値」によると、日本の空き家は約900万戸にのぼり、住宅総数の13.8%を占めています。2018年の約849万戸からさらに増加し、過去最多を更新しました。空き家の多くは、相続や転居をきっかけに発生し、活用方針が決まらないまま維持されているケースが少なくありません。
岡本さんのケースも、まさにその一例でした。年間の維持費は、固定資産税が約12万円。保険料や交通費などを含めると、年間でおよそ30万円にのぼります。
「1回の支払いは大きくないのですが、毎年続くと重く感じるようになりました。何しろ、誰も住んでいないわけですから……」
空き家は使用していなくても、費用だけは確実に発生し続けます。さらに、管理が不十分であれば建物の劣化が進み、資産価値の低下にもつながります。国土交通省『空き家対策に関する現状と課題』(2023年)によると、空き家は放置期間が長くなるほど老朽化が進み、売却や活用が難しくなるとされています。それでも岡本さんは、「すぐに困るわけではない」という理由から、判断を先送りしていました。
