FPが伝えたい「孫破綻」を防ぐ3つの鉄則

では、このような事態を防ぐためには、どうすればよかったのでしょうか。ファイナンシャルプランナーの立場から、祖父母世代に知っておいていただきたい鉄則を3つお伝えします。

●鉄則その1 祖父母の役目は副次的なものと心得る
子どもの教育費を負担する一次的な責任は親(子世代)にあります。子世代が負担しきれない孫の教育費を親世代が援助する義務はなく、支援を求められたからといって自分たちの生活を犠牲にする必要はありません。支援をするにしても「できる範囲で」と、親も子も節度を持つことが大切です。

●鉄則その2 援助の前に「自分たちの老後資金」を先に確保する
援助を始めるタイミングは、多くの場合、退職直後の「懐が温かい時期」と重なります。しかし、退職後の生活は思った以上に長く、医療費や介護費は年齢を重ねるほど増えていきます。援助を検討する前に、まず「自分たちが生涯にわたって必要な資金総額」を試算しておきましょう。介護費用も加味したうえで、「余った分だけ援助する」という優先順位を徹底します。

●鉄則その3 援助するなら上限を最初に決める
一度出してしまったお金は戻ってきません。「頼まれたから出す」を繰り返していると、いつ終わるのかが見えなくなります。援助できる金額が決まったら、それを子どもに伝えておきましょう。最初に上限を知らせておけば、「まだ余裕があると思っていた」という認識のズレを防げます。

「孫のため」で老後が脅かされないために

幸いにも、周一さんは順調に回復して、自宅に戻ることに。リフォームや介護の不安からはいったん解放されました。しかし、その時が絶対に来ないとは限りません。

そこで退院後、周一さん夫婦は家計を見直すことにしました。貯蓄はずいぶん減ってしまいましたが、もう援助をする必要はありません。これからはできるだけ年金の範囲で生活するように心がければ、なんとかやっていけるのではないかと話し合いました。

周一さんの満夫さんへのわだかまりは、すぐには消えませんでした。それでも夫婦で慎ましく生活するなかで、「孫が一人前になるための手助けができた。それだけで十分だ」と徐々に思えるようになってきたのでした。

この事例では、結果として生活が大きく崩れる事態にはいたっていませんが、それは、たまたま条件が重ならなかったに過ぎないともいえます。

「孫のために」という思いでも、その善意が自分たちの老後を揺るがすものであってはなりません。前述の3つの鉄則を踏まえ、どこまで支え、どこで線を引くのか。それをあらかじめ考えておくことが必要だといえます。

松田聡子
CFP®