「あれだけ援助したのに」…息子のひと言で露呈した“ズレ”

骨折は意外に重度でした。当時、すでに80代間近という年齢もあり、手術とリハビリで退院まではしばらく時間がかかることに。日中は看護師やリハビリのスタッフが出入りしますが、ひとりになる時間も少なくありません。病室で横になりながら、周一さんの不安は増していきました。

もし、思うように歩けなくなったら、自宅の階段の上り下りはどうするのか。手すりを付けるだけで済むのか、それとも大がかりなリフォームが必要になるのか。あるいは、介護サービスに頼る日が来るのかもしれない。

減ってしまった残高で、そうした費用まで賄えるのか……。そんな中、見舞いに来た満夫さんと二人きりになったとき、周一さんはぽつりと口を開きました。

「実はお前たちに援助してきたこともあって、貯金がかなり減ってしまったんだ。この先のことを考えると不安でな」

満夫さんは驚いた表情で言いました。

「知らなかったよ、どうして今になって……。そんな状態だったなら、最初から頼まなかったのに」

満夫さんの心中には「援助してもらったことへの罪悪感」や「これから親の面倒を見なければならないかもしれない不安」が渦巻き、とっさに感謝の言葉も出なかったのかもしれません。

しかし、「あれだけ援助したのに、そんなものなのか」とがっくり肩を落とした周一さん。その裏には、感謝を求める気持ちだけでなく、自分が差し出してきたものの重さが伝わっていなかったことへの戸惑いがありました。