「孫破綻」は他人事ではない―― データが示す老後資金の現実

周一さんのような「孫への教育費援助が老後資金を圧迫する」ケースは、決して特別な話ではありません。

孫の啓太さんが歩んだ「私立中学→私立高校→私立理系大学」というルートにかかる学習費の総額を、文部科学省のデータで確認してみましょう。以下の図表は、「令和5年度子供の学習費調査」 による中学、高校各3年間にかかる学習費の平均額です。

出典:文部科学省「令和5年度子供の学習費調査」
【図表】公立・私立の子どもの学習費の違い(3年分) 出典:文部科学省「令和5年度子供の学習費調査」

中学校は、公立が約163万円に対して私立は約468万円。高校は、公立が約179万円に対して私立が約354万円。中学、高校とも公立と私立では数百万円の差があることがわかります。2026年からの高校無償化により、私立高校に進学した場合の負担はかなり軽減されますが、それでも私立中学の教育費負担は大きいままです。

そして私立大学の理系学部では、4年間の学費の総額は平均約567万円です(文部科学省「令和7年度私立大学入学者に係る初年度学生納付金平均額(定員1人当たり)の調査結果」より)。

このデータから中学から大学卒業までを単純に合算すると、1,400万円近くになります。もちろん満夫さんが一定額を負担していたとしても、周一さんが長年にわたって「足りない分」を補填し続ければ、数百万円規模の援助になったことになります。

また、啓太さんは4年で就職しましたが、理系だと大学院へ進学するケースも少なくありません。もしそうなっていれば、さらに援助が続いた可能性もあります。

問題は、こうした援助を、老後の生活を支えるはずの資金から出してしまうという点です。総務省「家計調査」(2025年平均)によると、65歳以上の夫婦のみ無職世帯では、可処分所得約23万円に対して消費支出は約26万円と、毎月約3万円の不足が生じます。

周一さん世帯の月23万円という年金収入は、この統計とほぼ同水準です。骨折による入院・リハビリの医療費が加われば、収支はさらに厳しくなります。

しかし、自分たちの生活費だけであれば、この程度の支出は想定内だったのではないでしょうか。孫のためにと財布の紐を緩め続けたことで、周一さん夫婦は経済的に不安な状態に追い詰められたのです。