高齢の親が一人暮らしをしていると、離れて暮らす子どもとしては、「できれば施設で安心安全に過ごしてほしい」と思うこともあるでしょう。しかし、施設の生活が親の自由を奪い、気力や体力を減退させるおそれもあります。今回は、子どもたちに説得されて老人ホームに入居した70代男性の事例から、一人暮らしの高齢者が自宅で生活し続けるポイントをCFPの松田聡子氏が解説します。
「ここから出してくれ」…我が子の説得で〈老人ホーム入居〉を決断→わずか1ヵ月の退去劇。78歳父、入居金500万円・設備の整った施設から〈築40年超・古びた我が家〉に舞い戻ったワケ【CFPが解説】
親の自立を守るお金の使い方。本当の親孝行とは?
一郎さんが帰宅した場合、バリアフリーでない古い家での一人暮らし、という状況は変わっていません。ここからは、FPとして一郎さんのような高齢者が安心して自宅で暮らし続けるために必要なことを解説します。
① 介護保険の在宅サービスをフル活用する
住み慣れた家で生活したい場合、介護保険サービスの利用が有効です。まずは居住する自治体の介護保険担当窓口や、地域包括支援センターに相談しましょう。要介護度に応じて訪問介護(ホームヘルパー)、通所介護(デイサービス)などを利用できます。福祉用具の購入やレンタルも介護保険でまかなえます。
② 住まいの安全を整える
介護保険の住宅改修給付を利用すれば、手すりの取り付けや段差の解消などの工事費用について、要介護・要支援の認定を受けた人を対象に、上限20万円まで所得に応じて費用の7割から9割が支給されます。施設の入居一時金と比べて少ない費用で、自宅の安全な環境整備ができると考えられます。
③ 自宅を安易に手放さない
施設入居が決まると「家を売って費用の足しにしよう」と考えがちです。しかし一郎さんのケースが示すように、自宅が残っていたからこそ帰る場所がありました。親の施設入居が決まっても、少なくとも数ヵ月は様子を見てから売却を判断するのが賢明といえるでしょう。
最後に、改めて整理しておきたいのが「施設入居の判断基準」です。子どもたちが親の状態を心配する気持ちは当然ですが、施設入居が最適解とは限りません。入居を検討する前に、①本人が本当に望んでいるか、②要介護認定の状況として施設がどうしても必要な段階か、③在宅サービスで対応できる余地はないかの3点を必ず確認してください。
自宅に戻った一郎さんは「ボロ家でも、やっぱりここが一番だ」と笑いました。千鶴さんと健太郎さんは、「親の幸せとは何か」を知ることができたのです。
松田聡子
CFP®