高齢の親が一人暮らしをしていると、離れて暮らす子どもとしては、「できれば施設で安心安全に過ごしてほしい」と思うこともあるでしょう。しかし、施設の生活が親の自由を奪い、気力や体力を減退させるおそれもあります。今回は、子どもたちに説得されて老人ホームに入居した70代男性の事例から、一人暮らしの高齢者が自宅で生活し続けるポイントをCFPの松田聡子氏が解説します。
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「ここから出してくれ」…我が子の説得で〈老人ホーム入居〉を決断→わずか1ヵ月の退去劇。78歳父、入居金500万円・設備の整った施設から〈築40年超・古びた我が家〉に舞い戻ったワケ【CFPが解説】
「安全」が「幸福」とは限らない…施設入居で後悔する前に知るべき「90日ルール」
一郎さんのように施設暮らしが合わなくて退去、というケースはそれほど珍しくありません。そこには、良かれと思って選ぶ施設と、高齢者の意思とのギャップがあります。
多くの家族は安全・安心を最優先にします。しかし、認知症でもない高齢者にとって、自分で家事をし、自分のペースで歩くことは、脳と体を維持するための「最高のリハビリ」です。それを一気に奪う施設環境は、時に認知機能や身体機能を低下させるなどの負の側面を持っています。
退去にあたって重要となるのが、「短期解約特例制度(90日ルール)」です。有料老人ホームに入居し、入居日から90日以内に契約を解除した場合には、入居一時金が返還されます。
一般的に有料老人ホームでは高齢者やその家族が入居する前に得ている情報と、入居後に得られる情報に大きな格差があるといわれています。その結果、比較的短期間で中途解約に至るケースが少なからず存在します。このような状況を踏まえて、入居者保護の観点から短期解約特例制度が設けられたのです。
退去の理由が自分側にあっても、ホーム側にあっても、この制度は同様に適用されます。返還される金額は、入居一時金から日割り計算した利用分が差し引かれた残額です。入居時は入居契約書や重要事項説明書において、短期解約特例について規定されているか必ず確認しましょう。
一郎さんのケースでは入居から30日余りでの退去だったため、500万円のほぼ全額に近い金額が戻ってきました。