500万円払って父を「牢獄」に入れたのか? 入居1ヵ月で決断した退去劇

最初は渋っていた一郎さんですが、子どもたちの真剣な様子に根負けし、施設への入居を承諾しました。ただし、自宅はそのままにするのが条件です。実家のケアは千鶴さんの負担になりますが、「施設に入居するなら」と折り合うことになりました。

こうして一郎さんは入居一時金500万円、月額利用料17万円の郊外の静かな有料老人ホームへ入居したのです。清潔な個室や食堂、週に数回のレクリエーション。廊下には手すりが完備され、段差はひとつもありません。「これでひとまず安心できる」と千鶴さんと健太郎さんは胸をなで下ろしました。

しかし、1ヵ月後、施設を訪ねた千鶴さんに、憔悴した様子の一郎さんが言いました。

「頼みがある。家に帰らせてくれ」

衰えがあったとはいえ一人でなんとか生活できていた一郎さんにとって、老人ホームでの集団生活は苦痛以外のなにものでもなかったのです。

最初は「施設の生活に慣れないからだろう」と思っていた千鶴さんですが、一郎さんの必死な様子に「お父さんをこのままここに住まわせるのは私たち兄弟のエゴかもしれない」と気づきました。

千鶴さんから父の話を聞いた健太郎さんも自分の過ちを認め、一郎さんは晴れて住み慣れた自宅へ戻ることになったのです。