いつ始める?…タイミングを見極める方法
分院展開は、本院の経営が安定し、次の成長ステージに進む準備が整ったときに行うべきだといえます。タイミングとしては、本院の経営が安定し、6ヵ月連続黒字で売上が増加傾向にあり、かつ自己資金で初期投資の30%程度を賄えるだけの余裕があるか、が判断の目安となります。
また、本院の患者満足度が維持・向上している状態か、待ち時間や予約の取りやすさなど、サービスレベルに問題がないかも見直します。分院展開を行う6ヵ月から12ヵ月程度は、本院への業務配分が低下するからです。
どこへ展開する?…立地選定のポイント
分院の立地は、成功を左右する重要な要素です。本院の診療圏と重複せず、かつ需要が見込める場所を選ぶ必要があります。ただ、本院と分院との距離は離れすぎず、近すぎずという距離で、行き来が30分から60分程度の距離が望ましいでしょう。
通常の開業と同様、競合調査は重要ですが、本院のウィークポイントを補完でき「ニッチ」な診療科やニーズがあるかという別の視点も重要となります。
近隣型(本院から数キロ圏内)
メリット:本院の既存患者が通院しやすい。院長やスタッフが両院を行き来しやすく、運営管理がしやすい。本院のブランド力やクチコミが活かしやすい。
デメリット:本院と診療圏が重複し、患者の奪い合いになるリスクがある。
適したケース:本院が飽和状態にあり、患者を分散させたい場合や、別の専門診療科目に特化したクリニックを開院する場合。
広域型(本院から離れた地域、他市区町村など)
メリット:新たな患者層を獲得でき、事業規模を大幅に拡大できる。競合の少ない地域に進出することで、地域医療への貢献度を高められる。
デメリット:本院からの管理が難しくなる。遠隔地のため、院長やスタッフが頻繁に行き来できず、両院の連携が希薄になるリスクがある。分院のブランド力や集客力をゼロから築く必要がある。
適したケース:本院の診療圏がすでに成熟しており、新たな成長市場を求める場合。または、特定のエリアに医療空白地帯がある場合。
どうやって分院長候補を選定する?…人物選定のポイント
分院長の候補者の人材確保、吟味は、分院展開の最重要項目です。見極めのポイントと成功の鍵となるのは、診療技術や経歴だけでなく、その人物が持つ人間性・コミュニケーション能力・既存のスタッフとの協調性です。自分のチームに迎え入れ、また、分院の経営の安定を図るためにも、三国志の「三顧の礼」のように、場面を変えた複数回の面談は必須となります。
なかでも重要となるのが、会食や会合での見極めです。とくに飲食店のスタッフへの言葉遣いや態度がチェックポイントです。会食中の言葉遣いは丁寧か、話の腰を折らずに相手の意見に耳を傾ける姿勢があるか、横柄な態度を取らないか、感謝の言葉を自然に伝えられるかなど、細部を観察しましょう。また、仕事以外の関心事として家族や趣味・オフの話など、リラックスした場面での会話から、人柄や価値観、ストレスの対処法などを探ることができます。
スタッフとの相性を確認することも重要です。分院長候補とスタッフが顔を合わせる機会を意図的に作り、両者のやり取りを観察します。たとえば、院内の見学をしてもらい、その際にスタッフに質問を促すなどです。最終的にはスタッフからのフィードバックとして「一緒に働いてみたいか」「この人についていきたいか」といった、本音での意見を得ることが重要です。
武井 智昭
株式会社TTコンサルティング 医師

