老後の生活を支える柱となる公的年金ですが、その受給額は現役時代の加入状況によって決定されます。不足分を補おうと窓口を訪れても、制度上の制約から希望が叶わないケースは少なくありません。ある男性のケースを見ていきます。
年金月17万円・65歳男性「1年分の未納を払いたい」と年金事務所へ向かうも、職員「できません」と拒絶。まさかの年金ルールに「何かの間違いでは」 (※写真はイメージです/PIXTA)

年金事務所で告げられた「追納できません」の意味

「未納だった期間を払えば、年金は増えると思っていました」

 

東京都内に住む会社員OBの佐藤一さん(65歳・仮名)。決定された年金額は月額およそ17万円です。佐藤さんは、学生時代や転職の時期に生じていた約1年間の国民年金未納期間について、今から解消できないかと考えました。

 

佐藤さんは日本年金機構の年金事務所を訪れ、窓口の職員に「過去の未納分を追納して、受給額を増やしたい」と申し出ました。

 

「未納期間は、いつ頃のものですか?」「合計で1年分ほどです。今から全額払いたい」

 

職員は記録を精査した後、制度上の規定について説明を始めました。

 

「『免除』や『猶予』ではなく、単なる『未納』の状態の場合、国民年金の保険料を後から納付できるのは、原則として過去2年分です」

 

佐藤さんは「10年前まで遡れると聞いたが……」と問い返すと、職員は「10年前まで遡れる『追納』は、当時、申請して免除や猶予の承認を受けていた期間に限定されます。当時何も申請していない『未納』期間については、2年を過ぎると制度上、納付することはできません」と返答しました。

 

さらに、佐藤さんはすでに65歳に達し、受給権が発生して支給が始まっています。職員からは、現在の年齢から取れる選択肢について「仮に任意加入によって受給額を増やそうとしても、すでに老齢基礎年金の受給権を得ている場合は、原則として国民年金に任意加入して保険料を納めることはできません。つまり、この未納分を今から埋める手段は、現在の制度上、存在しないのです」と説明を受けました。

 

「保険料を払いたいだけなのに、まさか拒絶されるとは……何かの間違いかと思いましたが、制度の仕組みそのものを、正確に理解できていなかっただけなんですね」