離婚危機……。「良き夫」として家庭を支えてきた自負がある人ほど、その衝撃は計り知れません。昨今の離婚相談の現場では、明らかな背信行為がないにもかかわらず、突然の別れを突きつけられるケースが後を絶たないといいます。ある夫婦のケースをみていきます。
「君のためを思って言ってるんだ」年収1200万円・45歳夫が絶句。良かれと思って放った“正論LINE”が「離婚の決定打」になった理由 (※写真はイメージです/PIXTA)

離婚の動機…「性格の不一致」の内実と法的現実

佐藤さんのケースのように、「決定的な悪事」がないまま、弁護士が介入して離婚へと進むケースは珍しくありません。

 

弁護士法人デイライト法律事務所『2025年 離婚原因調査(1439名対象)』によれば、離婚理由の第1位は男女ともに「性格の不一致」ですが、注目すべきはその内訳です。女性側の理由として、2位に「精神的虐待(29.5%)」がランクインしており、これは「異性関係(20.1%)」や「暴力(12.8%)」を大きく上回る数字となっています。

 

かつての離婚は「殴られた」「浮気された」といったわかりやすい被害がトリガーでしたが、現在は「言葉による支配」や「価値観の押し付け」といった、精神的な苦痛が離婚を決断させる最大の要因となっているのです。

 

同事務所の考察によれば、この背景には女性の経済的自立に加え、離婚に対する社会的ハードルの低下があります。昔であれば「我慢すべき範疇」とされていた不機嫌な態度や過度な干渉も、現在は「個人の尊厳を傷つける行為」として明確に拒絶される時代になりました。

 

また、最高裁判所『令和6年 司法統計』でも、離婚調停の申立て動機として「精神的に虐待する」が妻側で23.5%に達しており、家庭裁判所においても「目に見えない暴力」が離婚の正当な理由として定着していることが伺えます。

 

さらに、男性側でも変化が起きています。同事務所の調査では、男性の離婚理由4位に「異性関係(自分)」が11.1%と、前回の6.7%から急増。これは男性が自身の非を認めた上で、法的な解決(離婚)を求めて弁護士を頼るケースが増えていることを示しています。

 

「不倫も暴力もないから、うちは離婚にならない」という認識は、現在の法的基準や社会情勢から大きく乖離しつつあります。日常的な「言葉による否定」が証拠として蓄積され、弁護士による受任通知が届いた時点で、もはや夫婦間での話し合いの段階は終了しています。

 

現代の離婚は、私たちが気づかないうちに、日々の発言そのものが法的な判断材料として積み上げられることで成立しているのです。

 

[参考資料]

弁護士法人デイライト法律事務所『【2025年 離婚原因調査】1位は男女ともに「性格の不一致」。男性側では「自身の不倫」による相談が増加し4位へ』