長年会社を支え続けてきたベテラン社員が、ある日を境に「もう頑張るのはやめよう」と決意する――。特に就職氷河期を生き抜いてきた世代にとって、現在の賃金体系や評価制度には、拭いきれない不信感が漂っています。ある男性のケースを見ていきましょう。
月収45万円・50歳サラリーマン「もう、やってられない」と絶望…氷河期世代が「真面目に働くほど損をする」と会社に見切りをつける納得のワケ (※写真はイメージです/PIXTA)

失意に暮れる氷河期世代

大手物流企業に勤務する松本和男さん(50歳・仮名)は、1998年の就職氷河期に何十社もの面接に落ち続け、ようやく今の会社に潜り込みました。同期が極端に少ないなか、現場の配送管理から運行表の作成、荷主との折衝まで、人一倍の業務量をこなしてきました。深夜までの残業や休日出勤も「雇ってもらえた恩返し」として、当たり前に受け入れてきたといいます。

 

松本さんの現在の月給は45万円です。年収はボーナスを含めて約700万円ですが、今年、人事部から「50歳に達したため、今後の定期昇給は一切行わない」という通告を受けました。その一方で、会社は深刻な若手不足に対応するため、新卒の初任給を従来の22万円から25万円へと引き上げたのです。

 

「私の給料はこの先10年、定年まで1円も増えません。対照的に、今年入社した22歳の新卒社員は、順調に昇給すれば3年目には月給28万円を超え、残業代を含めると月35万円近くに達します。私が20代だった1990年代後半から2000年代前半、基本給18万円程度という低賃金で過酷な現場仕事を耐えてきたのは、50代になれば相応の賃金上昇があるという就業規則を信じていたからです。しかし、いざ自分がその年齢に達した途端、会社はルールを書き換え、私の昇給分を若手の初任給上乗せ分に回した。私の30年間の勤続は、後輩の給料を底上げするための数字の調整に使われただけでした」

 

松本さんの仕事は、現場の混乱を未然に防ぐ実務の連続です。2024年4月から施行された労働時間の上限規制により、現場のドライバー不足は深刻化しています。急な欠員が出れば松本さんが自らトラックを走らせ、荷主から無理な納期短縮を迫られれば、現場と交渉して調整に走ります。しかし、どれだけ現場を円滑に回しても、会社はそれを「ベテランの義務」と位置づけ、査定で給与が増えることはありません。

 

「納得がいかないのは、効率化のために導入された新しい運行管理システムを使いこなせない若手社員たちが、入力ミスやエラーが起きるたびに私に修正を頼んでくることです。彼らは私より高い昇給率を適用されながら、現場の泥臭いトラブル対応やドライバーとの交渉といった負荷の高い仕事は、すべて私に任せています。上司も『松本がいれば現場が回る』と言うだけで、増えた業務量に見合う手当を出すことはありません。私の30年間の経験や現場での調整能力は、会社にとって、対価を払う必要のない無料のサービスのように扱われています」

 

最近、松本さんは仕事に対する姿勢を大きく変えました。指示された最低限の業務はこなしますが、自ら改善案を出したり、若手のミスを肩代わりしたりすることは一切やめました。

 

「真面目に働いて成果を出しても、それが自分の給料に1円も反映されない以上、努力は無駄だと気づいたんです。会社が私を『安く使える労働力』としか見ないなら、私も会社を『給料を受け取るだけの場所』と割り切ります。50歳になり、私はこの会社のために尽くすのをやめました」

 

松本さんの言葉には、人生の半分以上を捧げた組織に対する、明確な失望と怒りが込められています。