長年築いたキャリアを活かそうと、多くのシニアが再就職に挑んでいます。しかし、期待とは裏腹な「役割の壁」に直面する場面も珍しくありません。ある男性が経験した事例を見ていきます。
ふざけるな!「年金月18万円・66歳」元管理職の男性が声を荒げた……経験者大歓迎のはずが、面接後に受けた屈辱 (※写真はイメージです/PIXTA)

期待と現実を隔てる「役割の壁」…どう乗り越えるか

佐々木さんの怒りは、企業側が抱く「シニア一括り」のステレオタイプに向けられたものでした。なぜ、このような認識の乖離が生まれるのでしょうか。

 

厚生労働省『令和6年 高年齢者雇用状況等報告』によれば、70歳までの雇用確保措置を講じている企業の割合は31.9%。実に3社に1社が70歳まで安心して働く機会を整備しており、シニアの就労機会自体は拡大傾向にあります。しかし、その実態は「同一労働同一賃金」の原則とは裏腹に、職責を大幅に下げることで賃金を抑制するケースが目立ちます。

 

また、リクルートワークス研究所の『シニア層の就業実態・意識調査2023』などでも指摘されている通り、多くの企業はシニアの経験を評価しています。一方で、過去の職位との整合性やスキル適応への不確実性から役割設計に慎重になり、結果として責任の限定された補助的業務に配置されやすい構造となっています。そのため、面接段階では「経験」を評価しつつも、実務の配分段階ではリスク回避を優先し、責任の伴わない「補助的業務」へと押し込めてしまうのです。

 

この「見えない線引き」を回避するためには、求職者側も「経験者歓迎」という言葉を鵜呑みにせず、具体的な業務範囲を早期に確認する必要があります。

 

●業務の定義を明確化する

「若手の指導」とは具体的にどの会議に出席し、どのような権限を持つのか。

●評価基準を確認する:

補助業務と専門業務の境界線はどこにあるのか。

 

企業がシニア人材を「有効な戦力」として扱うか、単なる「人手不足を埋める補助員」として扱うかは、過去の経歴ではなく「現在の現場で遂行可能なタスク」が合意できているかに依存します。佐々木さんの事例は、業務内容を曖昧にしたまま採用手続きを進めることが、結果として労働者の意欲を著しく削ぐ実態を証明しています。