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加速する「デジタル化」に取り残される高齢層
総務省『令和6年通信利用動向調査』によると、70代のインターネット利用率は以前より向上しているものの、依然として「利用上の不安」を抱える割合が高いことが示されています。特に、行政手続きやインフラサービスのオンライン化については、以下のような課題が指摘されています。
操作の複雑性と心理的障壁
デジタル庁の資料によると、高齢者がデジタルサービスを利用しない理由として「やり方がわからない」「自分には必要ない」といった回答が上位を占めています。
アナログサービスの縮小
多くの企業や官公庁が「ペーパーレス化」を推進しており、紙の払込用紙の発行手数料値上げや、窓口の完全予約制・廃止が進んでいます。これが、和子さんのような「従来の手順」に慣れた層への事実上の排除につながっています。
「助けを求められない」孤立化
厚生労働省の統計でも、高齢者の単身世帯の増加が顕著です。周囲に気軽に操作を尋ねられる相手がいない環境では、一度の操作ミスが「ライフラインの停止」という致命的な結果に直結しかねません。
「利便性の向上」を目的としたデジタルシフトは、結果として、デジタル操作に不慣れな高齢者が自立して生活を営む権利を制限する要因となっています。総務省やデジタル庁の調査が示す通り、紙の書類や有人窓口といった「アナログな選択肢」の縮小は、単なる手続きの変更に留まりません。自力で完結できない事態が増えることで、生活インフラの維持が困難になるだけでなく、自身の能力に対する自信を喪失させるなど、精神面にも深刻な影響を及ぼしています。
現代社会は、インターネット利用を前提に設計されつつあります。しかし、統計が示す世代間の格差を埋めるためには、デジタル化の推進と並行して、誰もが等しく公的サービスを享受できる代替手段や、対面による支援体制の維持が不可欠です。